16 最終回

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16 最終回

翌朝 帰るために、荷物を積み込む俺達のところに圭さんがやって来た。 「はい、これも仁さんのお店の分」 両手で抱えたブルーベリーの箱を2ケース手渡される。 「ありがとうございます」 和が箱を受け取って、トランクに入れている。俺はその様子を見ながら、わざと問いかけた。 「圭さん、一緒に帰りますか?」 「うるさいな、帰らないよ」 気まずそうに笑いながら答える圭さんは、昨日よりも綺麗だ。 「連絡先教えたんですか?」 「…………だってあいつ、しつこいから」 口振りとは裏腹に、嬉しそうに白い頬が薄紅色に染まっていく。 「あのさ………夏希くん、和くんと付き合ってること、敢えて翔に伝えたんだろう?」 「…………うーん、どうかな。和と、いちゃつきたかっただけかも」 「フッ……ありがとう」 小さくお礼を言われて、俺なりのやり方で二人の距離を縮められたことを嬉しく思った。 いつの間にか隣に並んでいた和も、俺の手にそっと触れ嬉しそうに微笑んでいる。 「おーい、まだ荷物があるぞ」 そう声がして、家の中から翔さんと叔父さん叔母さんをが出てきた。 「これは帰りに食べるおにぎりと、ブルーベリーね」 「ありがとうございます。嬉しいです」 叔母さんが渡してくれた箱を受け取って、お礼を言った。 「来年も良かったら、二人でまた来てくれよ」 叔父さんの誘いに、二人で大きく首を振って頷いた。 「あっ、出来れば二人部屋で………イテッ」 本音を言っただけなのに、和に腕を殴られた。 「翔さんも元気で、仁さんのカフェに圭さんと来てください。俺、今スイーツ作りの勉強中なんで」 和が言うと、翔さんは目を大きく開けて答えた。 「そうだね!約束するよ。圭、約束は守らないとな。和くんの作るスイーツ、二人で食べに行かないとな!」 翔さんの言葉に、優しく微笑みながら頷く圭さん。 どうやら近いうちに、二人にまた会えそうだ。 もう一度みんなに挨拶をして、車に乗り込む。三日ぶりの運転に緊張しながら車を走らせた。 和が助手席から身を乗り出して手を振って、俺達は山を下り始めた。 「翔さんと圭さん、いい感じだったね」 「うん」 二人がこの後、友達として絆を深めるのか、それとも恋人として愛を深めるのかはまだ分からない。 でも、俺達がきっかけで幸せが訪れてくれたら………凄く嬉しい 「一緒に来れて良かった……夏希の格好いいところ見れたし……」 「……俺、格好良かった?」 「うん………いつも周りのこと考えられる夏希が好きだよ」 ………それは和が、いつもそうだから。俺もそうありたいと思う。 和の手が、運転中の俺の太ももに触れる。 「………あのさ……夏休みはまだ終わらないから、帰ったら今度は二人きりで眠れる場所に旅行に行かないか?」 手を上下に動かしながら、上目遣いに俺を誘う和。唇をペロリと舐めて浮かべる小悪魔の微笑み。 「行く!直ぐに行こう!くそっ、仁さんに届けるブルーベリーがなければこのまま………」 窓の外には、来る時に停まった駐車場の看板が見える。 俺は迷わずバンドルをきると、駐車場の中に滑り込んだ。 「……早く」 シートを倒し両手を広げる和に、ブルーベリーよりも甘いキスを………… fin
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