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途中から和の案内で向かった農園。
到着した俺達を、叔父さんは大歓迎してくれた。
「とりあえず、荷物を置いた方がいいね」
そう言って案内された場所は、農園のすぐ横にある建物。叔父さんの住居らしい。
普通の家よりも大きなペンションのような建物に入ると、二階に案内された。
幾つか続く部屋。叔父さんが一番奥のドアをノックする。
すると中から、俺達ぐらいの歳の男が出てきた。
「どうしたんですか?」
「休憩中に悪いな。さっき話してた、今日から三日間手伝いに来てくれた子達だよ」
「ああ、どうぞ」
日に焼けた背の高い逞しい男が、笑顔で中へと招く。
部屋の中は十帖程で、壁に沿って二段ベッドが二つ置かれていた。間には小さなテーブルも置かれている。
両方のベッドの下の段は、布団が敷いてあり荷物が置いてある。
「俺達下の段を使ってるから、上しか空いてないけどいいかな?」
さっきの男が、ニコニコしながら和に言う。
四人部屋か………流石に二人きりにはなれないか………
「はい。大丈夫です。俺達三日間しかお手伝い出来ないので……」
俺の邪な思いなんて気づきもせずに、申し訳なさそうに言う和に、すっと手を出して握手を求める男。
「いやぁ、三日間でも助かります。僕は藤岡翔(ふじおかしょう)よろしくお願いします」
「北村 和です。こっちは西野 夏希。よろしくお願いします」
藤岡という男の手を握る和。にっこり微笑む顔が可愛くて………
やっぱりついてきて正解だ………
和のあと、俺にも差し出された手を握る。鍛えてる感じが伝わる手。
「同じ部屋を使ってる子はもう一人いるんだけど……ああ、いたいた」
叔父さんが廊下に向かって手招きをすると、中に入ってくる男?ん?男だよな?
肩まであるさらさらの髪の毛。身長は俺と変わらない位あるけど、線の細さがまるで女性だ。そして驚くほど綺麗な顔。
「圭くん。今日から三日間、手伝いに来てくれた子達だよ」
「北村和です。よろしくお願いします」
その人は和が手を差し出すと軽く握手をして、俺の前にすっと移動した。
「君は?」
「………西野夏希です。よろしくお願いします」
おずおずと出した手を、ぎゅっと握られ驚く。綺麗な顔が近づいてドキドキする。
和も中性的だけど、それを上回る。スカートを履いても不自然な感じがしない気がする。
まじまじと顔を見てしまい「俺の顔、何かついてる?」なんて笑われてしまった。
「いえ!」
慌てて手を離すと、笑いながら部屋の奥に入っていく。
「圭、からかうなよ。ごめんね。こいつは戸田 圭(とだ けい)。綺麗な顔してるからよく間違えられるけど、ちゃんと男だから」
「からかった訳じゃないよ。それで夏希君は……どっちのベッド使う?」
そう言いながら、圭さんが片方のベッドの下の段に座って微笑んだ。
これって………どういう意味?
「お……俺は……」
どぎまぎしながら和を見ると、見たこともないような冷たい顔がこちらを見ていた。
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