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「和!待ってよ和!」
部屋に荷物を置いて、手伝いを始める為に向かった農園。
さっきから一言も口をきかない和。
あの後……
「俺がこっちのベッドを使います!」
語尾強めにそう言って、圭さんのベッドの上に荷物を置いた和。
「あ、じゃあ俺がこっちで……」
慌てて翔さんの上のベッドに荷物を置く。
「わぁ、夏希君がそっちだと、寝顔が見れそうだね……フフ」
その圭さんの一言に、和の顔が一段と冷たくなった。
そして今………
明らかに不機嫌な和を追いかけている俺。
足が速いんだよな………俺の呼び掛けも無視し続けてる。
やっと追いついて、その肩に手を掛けて振り向かせた。
「ねぇ、和……」
「なに?」
「何って……何で怒ってるの?」
「別に、怒ってないし」
「うそ、怒ってるよね」
「……………圭さんの顔に見とれてた」
「あれは……」
「仕方ないよな、すごく綺麗だし」
「………」
「夏希、気に入られたみたいだし」
「………和」
その身体を引き寄せ、抱き締める。
「ごめん……そんなつもりじゃなくて……」
「夏希も……綺麗だなって思ったんだろ」
抱き寄せる腕に力を入れる。
「………思ったけど…俺は和の顔が一番好き。誰よりも綺麗で可愛い」
和が、やっと俺の背中に腕を回した。
「和……やきもち妬いてくれるの嬉しい」
「…………妬いてないし」
「いつも、俺ばっかりやきもち妬いてるから……」
「………俺がこんなに好きなのに?」
腕の中で、俺を少し見上げる和。
ヤバい最高に可愛い……
たまに、こうやって妬いてもらうのもいいな………
俺は和の頬に両手を添えると、チュッと軽いキスをした。
すると、さっきまでの冷たい顔が嘘のように桜色に染まっていく。拗ねて尖っていた唇も誘うように薄く開く。
………ああ………さっきの車の中の続きがしたい……
くそっ、兄貴に邪魔されなければ………
俺のモヤモヤに気がついたのか、和の手がそっと俺の頭に触れる。
まるで子犬でもあやすように「よしよし」と言って髪を撫でられた。
「さあ、手伝いに行こう!」
身体を離して歩きだす和。その華奢な後ろ姿から漂う甘い香り。
俺達は、この香りでお互いの気持ちが分かってしまう。
和も本当は………
俺は走って追いつくと、その肩を抱いて歩きだした。
しかし………四人部屋なんて………
しかもベッドとベッドの間は1.5メール程離れてる。
和のベッドに忍び込むのは当然無理。
夜は二人きりになれるかも……なんて俺の淡い期待は、あっという間に弾けとんだ。
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