15人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
7
二人で気持ちも身体もお湯で静めて部屋に戻ると、先に風呂を済ませていた翔さんと圭さんが、ベッドとベッドの間に小さな折り畳みテーブルを出して待っていてくれた。
「歓迎会だ」
翔さんが、缶ビールを俺達に手渡しながら言う。
「つまみは大したものないけど」
テーブルには、少しのお菓子とブルーベリーが置いてある。
「ブルーベリーだ!」
「これは叔父さんから」
和が嬉しそうに座る。俺も自然とその隣に座った。
缶ビールを開けて乾杯すると、翔さんが話し始めた。
「では改めて自己紹介。俺は大学4年の22歳。親父と叔父さんが知り合いで、この農園には子供の頃から来ていて、高校に入ってから夏はバイトするようになった。もう……7年目か……残念ながら、就職するから今年で最後だけど……で、こっちが…」
「自分で話すよ」
翔さんが続けて話そうとするのを、圭さんが止めた。
「俺は、翔と同じ歳。この農園には4年前から手伝いに来てる」
「圭さんも、今年で最後ってことですか?」
「まあ……そうかな」
普通に話す翔さんと比べて、どこか寂しそうに話す圭さん。このバイトが気に入ってるのか……大学生活が終わる寂しさか………
「俺は、大学2年です。叔父さんの甥っ子さんが経営してるカフェで、バイトをしてて……今年は人手が少ないと聞いて、手伝いに来ました」
圭さんの隣にいた和が、続けて話す。
「……ああ、仁さんのカフェ?俺もブルーベリーを届けに行ったことがある。ケーキが旨いんだよな」
翔さんが、ブルーベリーを口に入れて言った。この人も、かなりのイケメンなんだよな………
圭さんと並ぶと、普通の美男美女のカップルに見える。
「俺は大学1年です。和が手伝いに行くって言うので、ついてきました」
本当は恋人ですって言いたかったけど、和に相談もなしで言ったら怒られそうだから止めておいた。
でも、牽制はしておきたいから、身体を和の方に寄せる。
「…………仲良しなんだな」
なんだか色々分かってそうな圭さんが、片方の口角を上げて言う。
対して翔さんは、「そうなんだ」なんて呑気にビールを飲んでいる。
全然伝わってなさそうだな……
「二人はいつから?」
伝わってそうな圭さんからの質問。
「えっ……あの中学の後輩で、高校の後輩で……」
なんとなく圭さんの意図に気づいた和が、しどろもどろ答える。
「もしかして、大学も一緒?」
圭さんが続ける。
「………そうです」
「ふーん。ずっと一緒なんだ」
「はい……」
「…………羨ましいわ」
羨ましい……………?
「翔さんと圭さんは、大学は一緒ですか?」
「いやいや違うよ。圭とは、毎年ここで夏だけの付き合いかな」
「そうなんですか?凄くなか良さそうに見えます」
「うん……なんでかな、こいつとは気が合うんだよね」
翔さんの一言に、圭さんの顔がうっすら赤みが差した気がした。
最初のコメントを投稿しよう!