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同じ部屋。手は届かないけど隣に寝てる和。身体を起こせば、寝顔も見れる。
でも………これはこれで切ない
………もっと近くで見たいし、触れたい……
朝から緊張の運転。慣れない農園の仕事。適度なアルコール。
身体は疲れて目蓋もすっかり重いのに、和の寝顔を見ていたくて必死になってる自分が可笑しい………
せっかく同じ夜を過ごしてるのにな………
疲れたのは和も一緒みたいで、オレンジ色の優しい光の中で、すやすやと寝息を立て眠っている。
時々、俺の方が数倍和を好きなんじゃないかと考えてしまう………
両思いと片思いを、繰り返してるような初恋は楽しいような苦しいような………
翔さんのいびきが聞こえだして、これは寝ないとまずい………そう思い始めたところで、和のベッドの下、圭さんがふらっとベッドから立ち上がるのが見えた。
そのままゆっくりと俺達のベッドに近づくと、座った?俺は慌てて身体を戻した。
ベッドの側にいる圭さんの気配を感じる。
もしかして………
俺は音を立てないように上半身を起こし、少しだけ下を覗いた。
圭さんは、膝立ちの状態で翔さんを見ている。
この角度からだと表情まではよく分からない。ただ圭さんの少し茶色い髪が、小さな豆電球の光にキラキラと輝いて………
相変わらず………翔さんの軽いいびきが聞こえてるから、起こしに来たわけじゃない。
ただ寝顔を見てるんだ。
しばらくすると、圭さんは立ち上がり自分のベッドに戻った。
これはどう考えても………
騒ぎ始めた心臓を、胸の前に手を置いて抑える。
圭さんは………翔さんのことが………
じゃなきゃ今の行動は説明がつかない。俺だって和の寝顔を側で見たい。
圭さんの秘密の行動を見てしまった………
風の音もない、静かな静かな夜。俺はなんだか切なくて、よけいに和に触れたくなった。
なかなか寝付けなくて起きられなかった朝。
和に起こされた時は、部屋に翔さんも圭さんの姿はなかった。
「………和」
ベッドから降りて、和を抱き締める。深呼吸をして和の香りを吸い込んだ。
「………夏希?……どうした?具合でも悪い?」
「ううん。癒されたいだけ」
「フフ……何だそれ」そう言いながらも俺の頭をよしよしと撫でてくれる。
「今日も頑張ろう」
「うん」
俺達は軽くキスをして部屋を出ると、食堂に向かった。
「おはようございます」
もう既に食事をしている翔さんと圭さんの前に、和と並んで座った。
「おはよう。寝起きでもイケメンだね、夏希くん」
昨夜のことが夢だったかのように、俺に声をかけてくる圭さん。
何も知らない和が、ちょっと不機嫌になったのが椅子の座り方で分かった。
翔さんの前で、俺に絡むのはもしかして………
俺は和を気にしつつ、ご飯を口に掻き込んだ。
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