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お昼ご飯のあと、今日は一緒に出掛けるのだ。
樹の隣に並んで歩く汐里。
いつの間にか自然に繋がる手と手。
付き合い始めた頃の汐里は、手を繋ぐだけでも汗をかき、ドキドキし、顔がカーっと熱くなっていた。
最近は、ある程度自分でコントロールができるようになったようだ。
成長したと言えるだろうか。
それでもやはり高揚する気持ちは抑えることはできず、頬はピンク色になっている。
そんな汐里を見て樹が密かにきゅんとするところまでがセットだった。
目的の店を目指して二人並んで歩いていると、前から見慣れた姿が現れた。
「あっ!伊織さんだー!こんにちは~!」
汐里が嬉しそうに名前を呼ぶと、呼ばれた伊織は気が付き、パッと二人の方を見て柔らかい笑顔を向けた。
「やあ、こんにちは」
「どうも」
顔じゅうに笑顔を浮かべた汐里と、愛想笑いの欠片もない樹。
対照的な二人が伊織の前に立っている。
「汐里ちゃん、今日も可愛いね」
「やだ~!伊織さんたら~!」
きゃっきゃはしゃいでいる汐里と、相変わらずムスッとしている樹。
伊織はどうしてそんな言葉をさらっと発することができるのだろう。
目の前の二人のやり取りを見ながら、樹は自分の心の奥に黒いもじゃもじゃした糸くずの塊のようなものを感じた。
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