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「あ~、今日も終わったね。お疲れさま」
バーの入口に「CLOSE」のプレートをかけ、鍵を閉める。
伊織は樹の肩に手をポンと置き、労った。
「お疲れさまでした」
カウンターをクロスで拭き、後片付けを一通り終えた二人は、オーナーの篠原とその妻のルミに挨拶をしてスタッフルームで着替えを始める。
「指輪、いいの見つかったの?」
伊織が制服のベストのボタンをはずしながら言う。
「はい、しおりんの好きなブランドので決まりました。調節とか刻印とか、色々お願いしてきたんです」
ほんのりと樹の頬が赤くなっている。
普段あまり照れたりすることのない樹がこんなふうになるのは珍しい。
「そっか、一生モノだもんね。いいのが見つかって良かった」
言いながら、伊織は外してあった自分の結婚指輪を左手の薬指に付け直した。
食品を扱う職種のため、仕事中は外しているのだ。
「彼女の喜ぶことは何でもしてあげたいから」
そう言ってますます照れる様子の樹に、伊織は心の奥がくすぐったく思った。
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