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「伊織さんは、ほんとにキャラメルミルクティーみたいですね」
「え?急に何?」
樹の言葉にきょとんとして伊織は言った。
「あ、いえ。何でもないです。オレは苦いブラックコーヒーなんで」
視線を少し下に向けて言う樹に、伊織は何のことだか分からない様子だ。
「オレ、苦くてつまんない男ですけど、オレを選んでくれたしおりんのことは幸せにするって決めてるんです」
真っ直ぐ伊織の目を見て、樹は続けた。
「伊織さんみたいに余裕のある男じゃないし、未熟だけど。でも彼女のことは」
「今日はどうしたのさ。やけに決意を表明してくるね?」
いつもはどちらかというと自分のことはあまり話す樹ではないはずなのに。
伊織は樹に、深い微笑みを向けた。
見透かしたような伊織の表情。
そして、樹の左肩をぽんと軽くたたいた。
「キミにしかあげられない幸せがあるんだよ」
「あ、えっと」
「ほら、早く帰ってあげな?待ってるんじゃないの?」
微笑みを浮かべている伊織に、樹は無言で首を縦に振った。
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