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成長した高校生探偵でも少しは乙女らしい
「人質として監禁されていた、小学一年生の阿部 美由紀ちゃんが保護されました!犯人も捕まったようです!犯人が警察に連れられパトカーに乗せられています!」
現場を中継しているアナウンサーが言う。そこで係と思われる人物がそのアナウンサーに二言ほど告げた。
「ここで速報です。なんと今回もこの事件の犯人を捕まえたのはあの高校生探偵として知られている、羽里 美羽さんだそうです!人質には怪我はなく無事に保護されたそうです。____」
「お前また昨日テレビに出てたみたいだぞ。」
リビングで昨日予約して撮っておいたニュースを見て金馬が言った。
「お前ももう有名人だな。」
そう言う彼の目線の先には制服の上にエプロンを付けた一人の女の子がお弁当を作っている。
「まあ、美由紀ちゃんが無事で何よりですね。」
そう言いながらお弁当におかずを詰め終わるとそれを包んで、金馬に「はい、お弁当。」と言って手渡した。
「おお、ありがとな。」
と言って金馬も受け取る。
「じゃあ私学校行ってきます。」
女の子がエプロンをはずしながら言った。そのまま玄関に向かいカバンを持ってドアを開けた。
「行ってきます。」
「おう。美羽いってらしゃい!」
美羽は朝の日差しを心地よく感じながら家を出た。美羽の通う高校はその地域では一番賢いと言われるほどの進学校だ。校門に入る前に美羽はサッとメガネをかけた。美羽が新聞やニュースに顔を出すようになってからは、戸籍上の名前も金馬美羽としていて学校などでは羽里美羽とは別人だと思われるている。
挨拶が飛び交う校門を抜け、自分の教室へと向かう。まだ教室には少人数しか来ていない。美羽は教室の端に位置する自分の席へ行き、朝のホームルームの準備をし始めた。美羽は(これは幼い時からだが)人付き合いがあまり得意ではなく、クラスにもあまり友達といえるほどの子はいなかった。女子は羊の群れみたいになっていつでもどこでも一緒にいるし、リーダー格の子の言った通りにして、自分の根がないし、男子は男子で暴れたり、問題を起こしたり、不真面目な所があり美羽もあまりクラスの人とは関わりたくないと言う感じだった。美羽はまだ、三十分以上時間があるのを確認して一度教室を出ることにした。廊下を歩いて向かう先は、理科室だ。ノックをすると中から、
「ああ、美羽さんだね。どうぞ!」
という感じで明るい元気のある声が聞こえてきた。ドアを開けて中を覗くと、俗にいう高身長イケメンって普通に言ってもいい感じの若いスーツ姿の先生がいる。彼は櫻井 敬和、美羽の通う高校の先生だ。彼は女子から特に人気があり、櫻井先生ファンクラブができるほどの人気があり、ほぼ学校のアイドルのような存在になっている。
「おや、今日はどうしたんだい?たまにはクラスの人たちと仲良く話すのもなかなかいいものだよ。」
「いえ、今日はこの前先生から借りた本を返しにきただけです。」
そう言って持っていた本を差し出した。この本は古代エジプトの謎について考えられた仮説を詳しく書かれていて、ピラミットの謎や古代エジプトに伝わっていたとされる神話などをもとに説明してある本で櫻井先生はそう言った非現実的な怪奇事件などを科学的に解き明かしたいという感じの少し変わっている先生だ。まあ、この話を知っているのはこの学校では美羽だけで櫻井先生ファンクラブに所属している生徒も知らないのだ。
美羽が櫻井先生と出会ったのは入学式___
入学式ということもあり、美羽は普段よりも早くきてしまいとりあえず教室に向かおうとした所、櫻井先生が段差に躓いたらしく、盛大に転け、手に持っていた二つ段ボールから資料がなだれ落ちるように廊下に散乱してしまったのだ。美羽は「大丈夫ですか!」と驚きながらも近寄り、廊下に散乱していた資料を束ね始めた。
「いや、ごめんよ。」
と言いながら先生も一緒に資料を束ね始めた。とりあえず落ちていた資料を段ボールに入れ直して、一安心した所、、、
「いや助かったよ!君新入生だね!ってあれ?」
と言って美羽のの顔に自分の顔を近づけながら渋々と眺め始めた。美羽自身あまり顔をジロジロ眺められることは今までになかったし、こんなに誰かの顔が近くにあることなどなかったのでかなり驚いた。
「君、名前は?」
「は、、金馬美羽です。」
咄嗟のことだったのでつい羽里と言いそうになってしまった。そこで先生は体制を立て直し、、、
「そうか、、、」
と言ったがまだ美羽の方を見つめているようだ。
「あの良かったら、運ぶの手伝いましょうか?」
美羽が言うと櫻井も最初は断ったが美羽がそれでもと言うように言うと、じゃあ、と言って軽い方の段ボールを渡してくれた。どこに持っていくのかと尋ねると理科室に運ぶとだけ言われた。理科室に運び終わると、、、
「いやーお疲れさん。良かったらなんか飲んでいくかい?コーヒー、紅茶、ココア、ぐらいなら出せるけど、、、」
「じゃあ、紅茶を、、、」
「おすすめはココア、、、」
二人の声が重なるように言ってちょっと正直気まずかった。
「ああ、紅茶ね。、、、ちょっと待っててね。」
と言われて近くにあった椅子に美羽は腰を下ろした。しばらくして櫻井が二つのマグカップを持って、戻ってきた。
一つは美羽の紅茶の入った水色のマグカップ、もう一つは黒のマグカップで中にはココアが入っていてマシュマロまで乗っている。
それを見て美羽はちょっと驚いたが、それに気づいてすぐに
「ミルクと砂糖はいる?」
と聞かれたので美羽は大丈夫ですと言ってマグカップを受け取った。
「先生って甘党なんですね。」
美味しそうにココアを飲む先生に美羽が言った。
「まあね。僕は結構甘いものが好きでね。それに脳を動かすにはブドウ糖が必要だからね。」
と言って、もう一度ココアを飲む。美羽も紅茶を一口飲んでみた。香りも良くてちょうど良い暖かさだ。
「君さ、高校生探偵で有名の羽里美羽さんじゃないの?」
「えっ?なんですか急に?」
「似てるんだよ。まさに瓜二つって感じで、、、」
そうして彼はこう続けた。
「僕ね。この世界で起きている怪奇現象について解き明かすのが趣味でね。
それで君にちょっとしたお願いがあってね。君バイトしてくれないかな?」
「、、、、えっ?」
とまあ、こんな感じで出会ったはもののそのバイトというものは先生の助手をすることで最初は断ったのだが、どうしてもと言われて渋々やることにしたのだ。でも羽里鈴歌との関係は全然教えてくれない、、、正直美羽が今まであった中で彼は特別変わり者だろう、、、
「そうだ新しいバイトの依頼があるんだけど空いてる日はあるかな?」
「私は急遽予定が入らない限りいつでも大丈夫です。」
そうこのバイトというのがまさに怪奇現象を解決したいという感じの依頼を引き受けては真相に持っていくというものだ。美羽もそれを聞いて始めは私じゃなくてもいいじゃないですか?と言っていたが、先生的には憧れの名探偵に会えて自分の助手になって事件を一緒に解決できるなんて最高なものはないだろう!と真面目な顔で言って来るものだから反応に困る、、、
「じゃあ、今週の土曜にしようか。よし君もそろそろ教室に戻った方がいいね。じゃあまた土曜に!」
という感じで、別れて美羽は教室へと戻った。もともとバイトは一度きりのつもりだったのだが、美羽がこの学校の七不思議とも言われた「呪いの靴箱」、「真夜中のセイラさん」、「封印された空き教室」、「音楽室の肖像画」、「中庭の小人」、「放課後に学校を彷徨う人魂」の怪奇現象を入学してたったの一週間で解き明かしてしまうと、先生がどうしてもというようにバイトを続けてほしいとまで言われた。まあ、先生には自分が羽里美羽だということがバレてしまっているし、決して悪い先生ではない、、、しかし美羽的に思うことは、あの先生はまさに体と頭脳は大人で心は子供って感じがする。それに何かに夢中になると相手が誰であろうと、顔を相手の顔にものすごく近づけて、語り出したり、相手の手を握ったりして、ちょっと普通の人なら引きそうなことをする。まあ、大抵は先生がイケメンだから女子はきゃーきゃー言って謎に喜ぶけど、、、確かに先生の顔はとても整っていて俳優って言っても誰も疑わないとは思うけど、美羽的に恋愛対象としては見ないと思う。面白い先生ではあるし、優しくて親切ではあるが、別にそういう考えにはならない、、、というか美羽はそういう感情があまりよく分かっていないのかもしれない、小学生の時も女子の子たちから美羽ちゃん好きな人いないの?っと聞かれてもいないとしか答えてこなかったし、まずまずクラスに興味のある人がいなかった。
そんなことを頭のどこかに追いやって、やっと始まるホームルーム。
「はい今日の連絡は以上、何か質問のある奴はいるか?」
と言って、誰も言わなかったので「じゃあ今日も一日頑張りましょう」と担任の先生が言って、職員室に戻って行った。
「なあ、金馬。今日放課後暇だったりする?」
隣の席の男子、、、確か名前は川辺 栄作だったと思う。美羽はこの後どうせ、掃除の当番でも押し付けられるのだと思っていた。
「空いてるけど、どうしたの?」
「ちょっと話があるから、その、、、中庭に来てくれね?」
「えっ、、、別にいいけど。」
思っていたのと違い、正直驚いたがなんとなく今日は川辺くんちょっと顔が赤い、、、
「川辺くん大丈夫?なんか今日顔赤いよ。」
美羽が心配して尋ねると川辺くんは顔を隠すようにして「大丈夫」と言った。
美羽はどうしたのか気になったがあえて何も言わないことにした。
そして迎えた放課後__
早足に中庭へ行くと、もうすでに川辺くんが待っていた。
「あ、金馬。ごめんな。急に呼び出したりして、、」
「いやいや、全然大丈夫だよ。ところで話って何?」
そこで美羽は中庭に人がいることに気づいた。川辺と仲のいい坂野くんと切田くんだ。
「俺、金馬のことが好きなんだ!あれの彼女になってください!お願いします!」
と言って川辺くんが頭を下げた。美羽もいきなりのことすぎてかなり驚いたが、告白だとは夢にも思わなかった。
「ええと、、、その、、、」
美羽がなんと言えばいいのか分からず、言葉にならない声を言うと、、、
「返事はいつでもいいから。考えておいてほしい!」
と言われてじゃあ、また明日ね!と言われて、川辺くんは中庭から消えていった。そこで佐野くんと切田くんが立ち上がって、美羽の方に近づいてきた。
「あいつ、入学した時から金馬さんのことが好きだって言ってたから。」
「不器用な奴だけど、考えてやってくれ。」
と言って中庭から消えて行った。
美羽は帰る気にもなれず、理科室に無意識に向かった。ノックして扉を開けると、櫻井先生がココアを飲みながら、
「おや、今日はいつもより来るのが遅かったね。てっきり来ないかと思ったよ。」
「ちょっと、よく分からないことがあっただけです。」
「ほう、名探偵の君に分からないこともあるのかい?一体何があったのか聞かせてくれないかな?」
それでさっき川辺くんに告白されたことを話すと、、、
「へえー告白されたのか、、、」
と言って続けて言った。
「それがどう分からないんだい?」
「私にとって、恋愛というものはよくわかりません。それになぜ川辺くんが私を好きだと思ったのかも良くわかりません。」
「まあね。そう思うなら確かめればいいさ。一度川辺くんと二人きりで出掛けて見てはどうかな?そうしたら、彼がなぜ君が好きなのかもわかるし、君自身も彼について知れるだろう?」
「確かにそうですけど、、、なんか二人って気まずくないですか?」
「何を今更言ってるんだい。僕と調査に行く時は毎回二人きりでしょう?」
「ああ、先生に同意を求めたのがダメでしたね。要するに、恋愛対象として見てくれている人とっていうことですよ。」
「うーん。そうかなぁ?案外楽しかったりするよ。そういう考えを一回捨てて、一緒に遊びに行くと思ったら良いんだよ!まあ学生のうちしかできない恋なんだから付き合ってもいいとは思うよ。川辺くんいい子そうだし、、、」
「そういう先生はそういう感じの、、、デートとかしたことありますか?」
「美羽さん︎️⁉️それとこれとは話がちかうでしょ!」
すると先生は顔をかなり真っ赤にして
「今のとこ、そういうのはない、、、」
「あっ!これは好きな人がいる感じですね。」
「もーう!違うからね!勘違いしないでね!」
そう言いいながらもかなり顔は真っ赤で
「その人とは二人で出かけたことはあったけど、全部仕事だったから、、、、」
「へー社内恋愛ですか?」
「あーもう!この話やめ!」と一方的に言われ、依頼の話へと移った。
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