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邂逅①
レッスンが終了し、団員たちは一斉に荷物のもとに駆け寄り、タオルや飲み物を手に帰り支度をする。「お疲れ様」、と挨拶をする声がそこかしこから聞こえてくる。
白いレオタード姿の春日うららは、いつものように一人フロアの端に寄り、みんなを窺うようにして、ゆっくりと片付けをした。
「今日、お茶してこっか?」
紫のレオタードを着た狐目の木下結愛が、仲良しの加藤茉菜を誘っている。
「いいねえ。その後、プリクラの流れでどう?」
「OK、それでいこう」
結愛と茉菜がうららの方に顔を向けたため、うららは視線を落とした。鞄を開けて、タオルを出して汗を拭おうとした。
手に取った布は、今朝、うららが荷物を詰めた際に入れたタオルと違った触感がした。取り出すとそれはボロ雑巾であった。
「汚なっ」
うららの脇を抜けがけに、茉菜がそうポツリと呟いた。それを聞いて結愛が鼻で笑っている。
こんな物を持ってきた覚えはない。今日は真新しいタオルを入れたはずである。でもそれはバッグのどこを探しても見当たらない。
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