日常がなくなる

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 黄色いギンガムチェックカーテンの隙間から、まぶたに光を感じた優花。目つぶしされたのか、それとも鋭い剣が目にささったかのように、 「うわっ」 と、大声をあげて両手で目を押さえた。が、すぐにガバッと上半身をあげた。 「えっ何時?どこどこ、ないないない」  ベッドサイドなんて洒落たものはない。枕元に置いていたスマホが行方不明のようだ。 「ギェーぎょえ〜、なんなん、なんでなん、うそやん。まじで。えええーやばいやばいやばい、どこどこ」  枕をほり投げて、布団を捲り上げながら足をバタつかせて繭から勢いよく抜け出したせいで、ペンギンはクルリと一回転してベッドから落ちた。 「あっ、ごめん、ごめん、ペンちゃん」 優花は優しくペンちゃんを抱えてベッドに寝かしてあげた。 「あっ」 スマホがあったのか。優花は何かを見つけた。 「ペンちゃん、足に引っ掛けて取れちゃった。ごめんなぁ」  それは、ペンちゃんの黄色いリボンだった。優花は両面テープで黄色いリボンをペンちゃんの胸元にくっつけた。 「学校から帰ってきたら、ちゃんとつけたげるからね」  ペンちゃんの頭を撫でてから、ベッドの下や洋服の山を崩しながらスマホを探していたが見つからない。 「あっそや」  優花は転がり落ちそうな勢いで階段を駆け降りた。すぐ居間になっている。こたつが真ん中にありそれを囲うように テレビ、小さなたんすが並んでいる。タンスの上の電話の子機を手にして、また、けたたましく階段を上がった。 「鳴ってないな、あーーー、電源切れてる?もしかして」  優花はベッドにぺたんと腰をかけて、昨晩のことを思い出していた。布団に入って、めぐりんにLINEしてたの覚えてる。 「やっぱり、この部屋にあるよな」 手に握りしめた子機のメモリが目に入った。 「ぎゃー9時30分やん、あかん、帰ってきてからや。探すのは。学校行かな、やばい」
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