日常がなくなる

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「ない」 玄関にいつものスニーカーがない。 ここまで、ないないづくしでもう驚かなくなってるのかもしれない。慣れたのだろうか。 冷静にボソッと呟いて、まだ箱に入ってるおニューのブランドスニーカーを渋々履いて裏口から出てきた。 「なんでぇーどーゆーこと、ないやん、ないで、なんでやねんっ」  舞台俳優がよくやるここぞの時の台詞回しの如く、大声で叫んでしまった。  通学に使ってる自転車が無いのだ。無いに慣れはないらしい。下駄箱上の鍵入れカゴをひっくり返して自転車の鍵を探してみたが、鍵は見当たらない。予備の鍵は下駄箱の中の箱に入っていた。  優花は裏口に座り込んで昨日学校から帰ってくる時のことを思い出していた。 「えっ、自転車も学校に忘れてる?いやいやいや…でも、あーーー」  優花は頭を抱えながらトボトボ歩き出した。高校は自転車だと十分ぐらい。歩ける距離なのだが、その足取りは鉄球を引きずってるようだ。
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