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優花は無言で右手を挙げてみた。
「ふふふ、バカね。私が手を挙げるわけないじゃん。鏡じゃないわよ」
優花にそっくりなジャージ姿の女の子は楽しげに笑っていた。
「わかってるわ。それっ私のジャージやん。いつ盗んだん。あんたが全部盗んだんやな」
顔を真っ赤にして、身振り手振りをしながら怒りを露わにする優花だが、もう一人の優花はそんなのお構いなしといった感じで
「今から大事な話をするから。まぁ座って」
優花は肩で息をしながら、初めは勢いで怒り狂ったけど、人のもの盗んで何話するの。冷静な女の子に恐怖を感じてきた。
とりあえず、言う通りにベンチに大人しく座った。
「私は、リザーブNo.91986032916」
「えっ、919億なんて?何言ってるの」
もう一人の優花は小さなため息をついて、ドサっとパイプ椅子に座って足を組んだ。
「私の名前よ。人類が誕生してからだから、そんな数字になるの」
優花は口をあんぐり開けてるだけで、言葉は発しなかった。
「歴史上の人物、偉大な発見、進歩。あなた、おかしいと思わない?人間にそんな力があるわけないじゃない。すべて、リザーブがやってきたことなのよ」
「…リザーブ?あのぉ私は歴史に名を残すような人物でもないし、フツーの高校生ですが」
優花はなるべく刺激しないように丁寧な言葉で話しかけてみた。
「地球上で誰のリザーブなるかは皇帝が決めるのよ。例えば、こんな人生嫌だ。とか愚痴ばかり、何もしたくないってだらしがない人間とか、
そんな人間の代わりにリザーブが有能な人生をおくるの。人類のために」
「もういいわ、わけわからん話なんか聞いてられへん」
優花は流石にイラついてきて、部室を出て行こうとした。
すると、リザーブは立ち上がり優花を指差した。
「キャッ」
優花の悲鳴が部室に響いた。なにか左腕に黒いモノが巻き付いている。
「いつの間に、手品」
それは黒いデジタルの腕時計だった。ゆっくり振りかえった優花の顔は真っ青だった。リザーブと名乗る自分にそっくりな優花をマジマジと見つめた。
そして、静かにこう言った。
「あんた、人間ちゃうんやな」
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