高校

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「最初から言ってるでしょ。私はリザーブNo.91986032916だって」  リザーブは斜に構えて勝ち誇ったように言い放った。  ここはネオン輝く未来都市のオシャレな空間ではない。  砂埃まう高校グランドの隅っこに建つプレハブ小屋のテニス部室。ボロいテニスボールや、使わないラケットが棚にひしめき合いながら埃をかぶってる。エアコンがないので扇風機と電気ストーブが隣同士に鎮座して、全く季節感を感じさせない放置部室空間だ。   「あはははは……お腹痛い」  優花はベンチに笑いながら寝っ転がった。砂埃の中でイキってるリザーブがツボに入ったようだ。 「何がおかしいの。あなたってホントにバカね。笑い事じゃないのよ。これから説明することは」  優花は笑いすぎて涙を流してる。 「えっ何?」  やっとベンチに座り直して話を聞く体制になった。 「だから、これからどちらかが消えるゲームの始まりなの」  ポカン顔の優花にリザーブは顔を近づけて、はっきりと言い放った。 「偽物だと見破られたら私の負け。偽物だと 見破られなければ私の勝ち。負けた方が消えるのよ」 「消えるって、死ぬってこと……負けたらリスク高すぎやん。なんそれ。やばっ。やめてよ。そんなゲームしたないわ。じゃあ、じゃあ、どーしてもやらなあかんのやったら、負けたら変顔にしーひん?」  優花は立ち上がって熱弁を繰り広げながら 狭い部室をウロウロし始めた。 「ホントばかね。同じ顔で変顔しても面白くもなんともないわ」  リザーブはまたパイプ椅子に座ってウロつく 優花を目で追いながら 「私はね、10年後最年少総理大臣、しかも女性初ってやつをやるためにあなたのリザーブになったの。日本を変えるためにね」  優花はピタリと足を止めた。 「無理無理無理、そんなん無理やって赤点ばっかりやのに」  リザーブに向けて左右に大きく手を振っていた。   「あなたじゃなくなるのよ。さっき言ったわよね。歴史上の人物にはリザーブがいるんだって 誰かはわからないけど。リザーブは他のリザーブを知り得ることはできないルールだから」  リザーブは立ち上がって、大きく伸びをしながら、足のストレッチもやりだした。 「さぁ、もう始まってるのよ。7時間以内に 私が見破られなければ勝ちなんだから」 「7時間って?」 「腕時計を見たらわかるでしょ」  優花は魔法のようにつけられていた、デジタル腕時計を見てみた。 6時間48分46秒 数字がどんどん減ってる。 「えっ、6時間47になってる」 「0になったらゲームオーバーよ」 「イヤやー」  優花は腕時計を見ながら減っていく数字を みてパニックになっていた。 「優花ーまだ、部室にいるの、鍵あった?」  親友の町田 恵が部室を覗きに来た。 「めぐりーん、助けて」  優花がめぐりんに抱き付いたら、めぐりんの体をすり抜けて、勢いあまって転んでしまった。  「あったわぁ、マジ耐えた」  さっきまでとまるで違う、関西弁でリザーブの優花が返事をした。 「3限世界史、山源休みやって自習になったで」 「よっしゃーやばかったわ、宿題してへんかったんや。学食行こか」  めぐりんと、リザーブ優花は並んでグランドを歩いていたが、途中でリザーブ優花が手を叩いて大笑いしている。 「わたしやん」  優花はポツンと一人グランドに佇んでいた。 「あかん、あかん。時間ないやん」  優花は腕時計を見ながら、急いで二人の後を追ったが、優花の足元に砂埃はたたなかった。
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