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岡部先輩は申し訳なさそうに手のひらをこちらに向け、受け取りを拒否する。
「先輩、甘い物苦手ですか?これコーヒー味なので甘くないです!」
なんとしても岡部先輩に食べてもらいたい。
1枚でも、ひと口でもいいから…!
「ごめん。俺、好きな子以外からの手作りは食べないって決めているんだ」
ふっと表情が柔らかくなった岡部先輩を見て、私の胸はズキンと痛くなった。
私は知っている。
岡部先輩のこの表情は、その人を見つめている時の表情だという事を……。
「……星野先輩ですか?」
私は震える小さな声で尋ねた。
「なんだ、知っているのか。でもまぁ…とっくに振られているんだけどね」
「えっ……!?」
だったら尚更私のクッキーを食べて欲しい。
食べて、私の事を好きになって、星野先輩の事を忘れて欲しい。
だけど……その効果が切れた時は?
効果が切れる前に、クッキーを食べてもらう?
私の事を好きになってくれたら、きっと毎日でも喜んで食べてくれるだろう。
でも、それって本当に私が好きになった岡部先輩?
私が好きなのは……。
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