恋される、ほろにがクッキー

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「きゃははっ。何それ、気の迷いってやつ!?」  昼休み、教室で親友かつ同級生の美琴に盛大に笑われた。  この反応は想像していたけど、私のこのモヤモヤした気持ちを吐き出さないと気が済まなかった。 「あの日だって催眠術でもかけられていたの?って疑いたくなるくらいのリアルな告白でさぁ。あれが演技だったらアカデミー賞もんだわ」  告白のシーンを今思い出しても、辰巳のあの表情にはドキドキしてしまう。  真剣な眼差しで、頬を赤らめ、切ない表情で、叶わぬ恋に身を引き裂かれそうに辛そうで…。 「あ、今日も作ってきてくれたんでしょ」  美琴が「それより早く出せ」と言いたげに机をトントン叩く。 「はいはい。材料残っているから作ってきたけどさ。うちコーヒーを誰も飲まないから、インスタント買ってまではもう作らないよ。作れて…あと1回限りかなぁ」  そう言いながら私はカバンから出した四角い缶の蓋を開ける。  ふわっとコーヒーの香ばしい香りが広がる。 「つまり遥の家にコーヒーのお中元を持っていけば、コレが食べられるという事か」と美琴は満面の笑みで、私が作ったコーヒークッキーをさっそく頬張る。 「いや、何もお中元じゃなくても」 「お!いい匂いがすると思ったら、何?手作り?」とクラスの男子が数人集まってきた。 「そう、コレめっちゃ美味かったんだぜ」と辰巳。  そうだ、先週同じものを作ってきた時、辰巳も1枚食べていた。 「俺もくれ」「俺も食べたい」「旨っ!」「マジで?オレも欲しい!」  四方八方から手が伸びてきて、あっという間にクッキーは無くなってしまった。 「ちょっとぉ!私の分が無くなったじゃない!」と美琴がマジ切れする。
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