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私は中学までピアノはおろか楽譜も読めず、音楽に関してはど素人だった。
そんな私は高校の入学式の吹奏楽部の演奏で、岡部先輩のドラムを叩く姿に一目惚れし、無謀にも入部した。
あぁ、やっぱり岡部先輩の事が好きだな。
冗談でも何でもいい。
岡部先輩に告白されたら私、きっと即答で返事をする。
訂正なんてさせたくない。
でも、そんな事ありっこ無いってわかっている。
岡部先輩はいつもフルート担当の星野先輩を優しい眼差しで見つめていた。
そう、辰巳も星野先輩推しなんだよね。
それなのに何であんな……。
「……クッキー?」
よく考えてみると、言い寄ってきた男子はいつも昼休みにバスケをしているメンバー。確か彼らはクッキーを1枚ずつ食べた。
辰巳が私のお菓子をつまむのは、今回に限った事じゃない。
だけどあのコーヒークッキーは今回初めて作った。
父親宛に戴いたお菓子や紅茶、インスタントコーヒーの詰め合わせの箱を見て「コーヒーは余るね」と言いながらネットで偶然見つけたレシピだ。
「あのクッキーのレシピは……」
まさか、私の事を好きになる魔法のレシピ?
それに気がついた時、私の胸は高鳴った。
心臓が耳にも付いているかと思うくらい、大きな音を立てて。
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