恋される、ほろにがクッキー

5/8

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 私は中学までピアノはおろか楽譜も読めず、音楽に関してはど素人だった。  そんな私は高校の入学式の吹奏楽部の演奏で、岡部先輩のドラムを叩く姿に一目惚れし、無謀にも入部した。  あぁ、やっぱり岡部先輩の事が好きだな。  冗談でも何でもいい。  岡部先輩に告白されたら私、きっと即答で返事をする。  訂正なんてさせたくない。  でも、そんな事ありっこ無いってわかっている。  岡部先輩はいつもフルート担当の星野先輩を優しい眼差しで見つめていた。  そう、辰巳も星野先輩推しなんだよね。  それなのに何であんな……。 「……クッキー?」  よく考えてみると、言い寄ってきた男子はいつも昼休みにバスケをしているメンバー。確か彼らはクッキーを1枚ずつ食べた。  辰巳が私のお菓子をつまむのは、今回に限った事じゃない。  だけどあのコーヒークッキーは今回初めて作った。  父親宛に戴いたお菓子や紅茶、インスタントコーヒーの詰め合わせの箱を見て「コーヒーは余るね」と言いながらネットで偶然見つけたレシピだ。 「あのクッキーのレシピは……」  まさか、私の事を好きになる魔法のレシピ?  それに気がついた時、私の胸は高鳴った。  心臓が耳にも付いているかと思うくらい、大きな音を立てて。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加