恋される、ほろにがクッキー

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 あのクッキーを、岡部先輩に食べてもらったら?  私の事を気にしてくれる?好きになってくれる?  辰巳はクッキーを1枚食べて、私への気持ちは3日くらいで冷めていた。  そして再度食べて、また私に甘々になっていた。  何枚も、毎日食べてもらったら…ずっと好きでいてくれる?  ……星野先輩より、私を選んでくれる?  信じがたい話だけど、試さずにはいられない。  私は居てもたってもいられなくなり、午後の授業が終わると部活をサボって家に帰り、半量ではあるけど残りの材料でクッキーを作った。  焼けたクッキーを冷まし、新品のラッピング袋に詰める。  震える手でリボンをかけた。  悪い事をしているようで、ずっと心臓は高鳴ったままだった。  ―――次の日の昼休み、私は岡辺先輩を部室に呼び出した。 「先輩、2年と半年間お世話になりました!打楽器の事全くわからない私をここまで育ててくれて、ありがとうございました!」  そう言って昨日準備したクッキーを震える手で差し出す。 「いや、先輩としては当然だし、遥が頑張るからこちらとしても教え甲斐があったよ。だけど…ごめん、コレは受け取れないよ」
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