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「オレ、遥のこと好きだわ」
放課後偶然居合わせた教室で、突然同級生の辰巳が告白してきた。
高校2年生の秋。人生初めての告白。
「は?何言ってんの?ふざけているの?」
これは決して塩対応なわけではない。
辰巳が私を好きなんてあり得ないからだ。
辰巳の好みは清楚なお嬢様タイプ。
私は大雑把な性格で、らしい特技といえばお菓子作りぐらい。
辰巳とは気の合う友達で、お互いに恋愛感情なんて一切なかった。
「や、自分でも気がついていなかったって言うか…。遥が部活の先輩を好きって知っているけど、オレの気持ちを知っておいて欲しかった」
辰巳は切実な表情を私に向けている。
正直困る。
辰巳が言う通り、私は同じ部活の岡辺先輩が好きなのだ。
「ありがとう。でも、ごめん。辰巳とは…今まで通り友達でいたい」
私は辰巳の想いを受け取って、真剣に答えた。
「わかっている。今は辛いけど…オレも遥と話せなくなるのは嫌だ」
「うん、私も…」
「………」
パン!と辰巳は柏手を打ち「聞いてくれてありがとう!突然悪かったな。じゃあ、また明日な!」と笑顔で教室を去っていった。
辰巳が私を……。
どうしよう。私が岡辺先輩を好きなのは変わらないけど、なんか急に辰巳が格好良く思えてきた。
―――土日を挟んだ3日後の朝。
「ごめん!この前の告白、やっぱり無かった事にして!」
辰巳が登校中の私を捉まえ、両手を合わせて頭を下げてきた。
「はぁ~?」私は人生で一番間抜けな声を出した。
「いや、本当に遥の事が愛おしくなったっていうか、なんていうか…とにかくごめん!忘れて!メールも削除して!」
昨日までの2日間散々私に甘々メールを送ってきていた辰巳は、それだけ言うと走って逃げていった。
なんじゃそりゃ!
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