1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「彩さん、電話ー!」
バイトのりらちゃんが彩を呼んだ。
そのとき彩は、デコに巻いたタオルを通り抜けた汗を頬に伝わせながら、お好み焼きを焼いていた。
化粧はとっくに流れ落ち、なのに一部根性で引っ付いているファンデーションがいるせいで肌にムラができていた。
真夏の暑い定食屋。
換気扇はブンブンいってるけれど、ひとつも換気されてる気配はしなくて、鉄板から上がる湯気は、ロックフェスティバルの熱気みたいだった。
「はいはいはい」
お好み焼きを手早く焼いて皿に移して、腹に巻いたカフェエプロンで手を払いながら、受話器を受け取る。
「もしもし、お電話代わりました」
男性の声がした。
彩は目を見開いた。
最初のコメントを投稿しよう!