プロローグ

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「彩さん、電話ー!」  バイトのりらちゃんが彩を呼んだ。  そのとき彩は、デコに巻いたタオルを通り抜けた汗を頬に伝わせながら、お好み焼きを焼いていた。  化粧はとっくに流れ落ち、なのに一部根性で引っ付いているファンデーションがいるせいで肌にムラができていた。  真夏の暑い定食屋。  換気扇はブンブンいってるけれど、ひとつも換気されてる気配はしなくて、鉄板から上がる湯気は、ロックフェスティバルの熱気みたいだった。 「はいはいはい」  お好み焼きを手早く焼いて皿に移して、腹に巻いたカフェエプロンで手を払いながら、受話器を受け取る。 「もしもし、お電話代わりました」  男性の声がした。  彩は目を見開いた。
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