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「それにしても、もう来週から春休みなんだなー。部活の練習や春期講習もあるから、あまり休みって実感湧かないけど」
「そうそう。お互い大変…っていうか、部長のお前はもっと大変だよなー」
以前の世界線では、この時期は特に忙しかったような気がする。長期休みにもかかわらず、普通に学校のある日より忙しいのである。
「お前はなんか予定あるのか?」
「ん?ああ…大体似たような感じかな」
僕は言葉を濁した。彼は全力で勉強にも部活にも向き合おうとしている。だが自分はそのような力はなかった。どこか冷えた目で勉強や部活を見ているからだ。部活はともかく、人生をやり直すために勉強には向き合う必要があるはずだ。だが僕は心のどこかで、というよりも、心の底から舐めていた。僕は勉強が比較的得意だったからだ。
「だよなー」
彼は無邪気に笑って言った。
「てかさ、遊びに行こうぜ」
「お、いいねー」
僕は喜んだ。中学生に戻って初めて見せた笑顔だ。アラサーになっても、遊ぶことは好きだ。もっとも、どこかに食べ歩きに行ったり、一人カラオケしたりといった、一人で遊ぶものがほとんどだった。そのため、集団で何かを楽しむということはとても久々で、新鮮なものだった。
そうだ。折角過去に戻ったのだから、とことん遊ぼう。勉強なんて、ほとんどしなくても大丈夫だ。中学生向けの勉強なんて、大して難しくないだろう。少なくとも、この時の僕はそう思っていた。いや、疑うことすらしなかった。
だが来週からの春期講習を受け始めた後、その考え方は一変した。
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