第1章 強くてニューゲーム?

3/11
前へ
/65ページ
次へ
春期講習初日。僕は数学の授業を受けていた。だが説明の内容が分からない。 「じゃあこの問題を…時谷君!」 「はい!えーっと…」 僕は立ちあがった。僕は本当は優秀なんだ。だから行けると疑っていなかった。だがその後に頭の回転が止まってしまった。 (あれ?前に習ったはずなのに…ていうか、以前受験生だった頃にはスラスラ解けたはずなのに、解けない…) 僕は焦った。先生の視線。友達の視線。額に伝う汗。激しくなる鼓動。中学卒業後は何度もこのような緊張を味わったが、これほどの緊張感を塾で味わったのは初めてだった。 「すみません…分からないです…」 僕は顔を下向け、口を開いた。 「先月やったんだけどな…田中!」 先生はため息をつきながら、田中を指名した。田中はすぐさま起立する。 「はい、23xです」 田中は自信満々に答えた。正直なところ、スポーツでは敵わなかったものの、彼に勉強で負けたことは一度もない。そのため、自分が解法を度忘れしてしまった問題を、いとも簡単に彼が解いていたことに悔しさを感じた。 「ちゃんと復習しとけよ?じゃあ次の問題だ…」 熱血で優しかった先生だったが、最近勉強で行き詰まりがちな僕に対し、どこか冷たくなっているような気がした。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加