第1章 強くてニューゲーム?

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その後もこのようなことが続いた。講義内容がよく分からない。僕が在籍しているコースは上位コースであり、さらに春期講習において、受験本番に向けて中3の内容の先取りを行ったり、応用力を身に着けたりすることが主な目的となっている。そのため僕は苦しんだ。中1中2の内容すら曖昧なのだ。特に暗記が主となる理社では、それが顕著に表れていた。昔は確かに覚えていたはずなのだが、なかなか思い出せない、ということが多かった。 ある日の授業終わりに至っては、帰り際に先生にこのようなことを言われた。 「全く…最近の時谷はどうも調子が悪いな。ちゃんとやってるのか?」 「は、はあ…」 僕は気の抜けた返事をすることしか出来なかった。 その結果は、春休みの終わりに受けた模試にも如実に現れていた。偏差値59だった。かつては60を下回ることはまずなかったはずなのに。 どうしてだ。 かつての自分なら難なく解けた問題が、どうしてか分からなくなってしまっている。自己採点はしなかった。するのが怖かった。成績が悪いのは手応えからして明らかだったからだ。 僕だって、春休み中怠けていたわけではない。帰宅後は多少疲れていても、少しは勉強するよう心掛けていた。だが中身がアラサーだからか、どうしても吸収出来ない。かつての自分のように、吸収出来ないのである。
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