第1章 強くてニューゲーム?

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父は貧困家庭の出身にもかかわらず、一流大学、一流企業に入り、さらにはそこで要職に就いている。海外を飛び回っているのもそれが理由だ。ストイックなその姿勢は尊敬する一方で、どこか恐怖のようなものを感じていた。部下にもその姿勢を押し付けていないか心配である。 だが父に対してネガティブな気持ちを抱いているのは、それだけが理由ではなかった。彼が海外で事故に遭ったせいで、合格していた私立高校に入学出来なくなってしまった。それに伴い、受かるかどうか微妙な桜崎第一高校を受験出来ず、ランクを大きく落として普通の公立高校にしか入れなくなった。そのため、粗暴に振る舞っておきながら、足を引っ張る時は引っ張ってくる父のことを恨んでいた。 そうだ。彼が事故にさえ遭わなければ、こんなことにならずに済む。 そう思った僕は、これから何が起こるのかを話そうとした。 「と、父さん」 「何だ?」 彼は不機嫌そうに言った。その勢いに負け、僕は口を閉ざした。 「な、何でもない」 未来の父は事故に遭い、そのせいで僕が受験出来なくなる。そんなことを言ったところで、あの厳格な父が信じてくれるはずがなかった。 「ちゃんと勉強しろよ」 それだけ言うと父は自室へと戻っていった。
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