第1章 強くてニューゲーム?

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やがて7月の模試を迎えた。 会場は近くの私立高校、と言っても申し訳ないが、レベルはそこまで高くないところだった。だがスポーツで有名らしく、全国大会の常連の部も多いらしい。 暑さと緊張で、汗が止まらなかった。この模試の結果で、上のクラスに行けるかどうかが決まるからだ。65取れれば問題ないため、何とかなるはずだが、それでも一抹の不安はあった。長い間ブランクがあったというのも大きいかもしれない。 席に座ってしばらく経つと、試験監督の方がやって来て、注意事項の説明を行った。そして最初の教科、すなわち国語の問題冊子及び解答用紙が配られる。 「はじめ!」 しばらくしてから試験監督の掛け声と共に試験が始まり、受験生は一斉に手を動かした。 (よし、問題を…っと、その前に名前名前…) 僕は一度深呼吸すると、自分の名前を書く。そして冷静な気持ちと共に、問題を解いた。 (解ける…解けるぞ…!) 過去に解いたことのある問題で、既視感も少しだけあるものの、全くと言っていいほど答えを覚えていない。それでも、解きながら、力が漲ってくる。ペンを握る力が強くなってくる。まるで絵でも描くかのように、滑らかにペンが動く。 その後の教科も同様だった。桜崎第一高校を受ける人ならば基本的な問題ばかりだったが、それでも自分にとっては大きな達成感に繋がった。全ての教科を解き終え、会場を後にする時、真夏の青空のように心の中が晴れやかになった。
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