第2章 葛藤

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しばらく経過して、11月頃を迎えた時のことである。気温はすっかり低くなり、いよいよ受験が近づいていると嫌でも感じた。 「はあ…」 自分は悩んでいた。いくら中学卒業後まともに勉強していなかったからといっても、中身は大人だ。つまりは大の大人が中学生相手に勉強で勝っていい気になり、さらには合格まで奪おうとしているのだから。 さらには、努力したところで良い成果が残せるのか、むしろ悪い結果になってしまうのではないかという不安があった。 折角進学校に行ったとしても、落ちこぼれになる。よく聞くパターンだ。実際に鈴木先輩という、中学の頃は優秀だった人の例もある。仮に受験で良い結果を残したところで、その先に良い未来が待っているとは限らないのではないか?進学校に行けば幸せになれると盲目的に考えていた僕だが、そんな疑念が心に湧いた。 その心境は成績にも反映された。秋に受けた模試の成績が少しだけだが落ちたのだ。いや、模試だけではない。学校で行う定期テストにおいても同様だった。たまたまというには、あらゆるテストで不調な結果に終わっていた。 そんなことを考えながら、夕暮れの公園のベンチで佇んでいた時のことである。
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