プロローグ

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「き…て…」 混沌とした意識の中、女性の声が聞こえる。どこか懐かしく、聞き覚えのある声だった。 「ん…ここは…どこだ…?」 そう小声、それこそ自分でもようやく聞こえるような声で言いながら、僕はゆっくりと目を開けた。 「ど、どうして…」 僕は驚いた。目を微かに開けると、そこには母がいた。以前帰省した時よりもずっと若々しい、それこそ僕が中学生くらいの頃の見た目の母だった。それだけではない。ゆっくりと上半身を起こして周囲を見渡したが、部屋の風景も、僕が丁度中学生くらいの頃のものだった。問題集が開きっぱなしになって置かれている勉強机、漫画が置かれているベッド、棚に置かれている小学生の頃サッカー大会で優勝して手に入れたトロフィー、床に落ちている開封済みのお菓子の袋…。まさに中学時代の僕の部屋をこれでもかと言うほど再現していた。 「もう塾の時間よ!」 まだ少し眠そうにしている僕に対して、母は言った。 「じゅ、塾…?」
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