あわれなるもの、都の鬼

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「さすが義姉上(あねうえ)だ。不快に思われたなら申し訳ない」 「いいえ」  私はニコリと微笑み返しました。  黒緋の弟とはいえなにを考えているか分からない方です。隙は見せたくありません。  次に紫紺と青藍を振り返ります。そろそろ寝床に行く時間ですね。 「紫紺、青藍、そろそろ休みましょう。でないと寝坊してしまいますよ?」 「ねる! はやくねる! せいらんいくぞ! はやくねるんだ!」 「あいっ」  寝坊という言葉に反応して紫紺が急いでくれます。  いつもはもう少し遊びたいと駄々をこねられることもありますが、明日からの畿内巡りがとても楽しみなようですね。 「さあ、青藍こちらに」 「ばぶっ」  ハイハイで私のところにきた青藍を抱っこし、紫紺とは手を繋ぎました。  二人には添い寝がいるのです。世話役の女官に任せられることだけど、私ができる時はなるべくしてあげたいのです。 「では私は二人を眠らせてきます。黒緋様と花緑青(はなろくしょう)様も良い頃合いで切り上げてくださいね」  私はそう声をかけると寝間に向かいます。  手を繋いでいる紫紺が嬉しそうに聞いてきます。 「はやくねたら、はやくあさくる?」 「ふふふ、それはどうでしょう。早くくるかもしれませんね。起きたら朝ですよ」 「やったー!」 「あぶぶっ」  子どもたちの無邪気な様子にクスクス笑う。楽しみなのは私も一緒です。  でもこれから眠るというのに少し興奮気味なのは困ったものです。  こうして私たちは明日から家族で畿内巡りをすることになったのでした。
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