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指輪
無事にクリスマスイベントが終了した翌日。
ご褒美に一日遅れのクリスマスディナーを二人で堪能した。
レストランを出てふと、空を見る
冬空、オリオン座が高く光り輝く。
「あ、オリオン座が綺麗に見えますね」
「今日は雲一つ無いし、新月だね。
そんなに寒くないし、少し歩こうか。」
「はい。」
『♪〜オリオンは高くうたひ
つゆと霜とをおとす』…か。
紗季、この歌さ、おかしい思わない?」
「ん?どこかおかしいですか?」
敏和さんがニコッと笑う。
「オリオン座は、『つゆ』つまり夏には見えないよ。」
「あ、そっか。冬の星座ですよね。」
「宮沢 賢治ってさ、星が大好きで当時高価な星座盤を持ってたくらいの人だった。高校の教諭をしてい人だからこんな間違いをする訳が無いんだよね。だからこの『星めぐりのうた』のデタラメな歌詞はわざとじゃないかって愛好家からは言われている。わかってて、間違い探しをさせている様な感じかな。」
「え?デタラメ?」
「『この間違いに気付けるかい?』って問いを出してる様だよ。」
私が不思議そうな顔をするのを見てニッコリ笑う。
「そう。だって
《赤い目玉のさそり》
アンタレス 目玉じゃなくて、
さそり座の心臓
《広げた鷲の翼》は
『大きな翼を広げる』とは、
はくちょう座の北十字。
《青い目玉のこいぬ》
プロキオンは《青色》
ではなくて《白色》
目玉ではなく心臓
♪おおぐまの足を北に
5つつのばしたところ
こぐまのひたいうへは
空のめぐりのめあて
ふと見ると、遊歩道にベンチがあるので座るよう促される。
『空のめぐりのめあて』めあて、つまり目印ってことは『北極星』のこと。おおぐま座は北斗七星を含む星座だから1年中見ることができる星座だよね。この『おおぐま座』のα星Dubheとβ星のMerakの長さ分を北へ5つ進んだ先に北極星があるけど『こぐまのひたいのうへ』ではなく、『こぐまの尻尾』なんだよね。」
「敏和さん詳しいですね。」
「あの星座盤、5年2組って書いてあっただろ?」
「キャンプの時見た星座盤?」
「そう、紗季と一緒に見た場所でこの話を親父に教わったんだ。」
「そうだったんですね、お父様も星が好きだったんですですね。」
「そうだね。昔から好きだった訳ではなかったらしいけど、お世話になった人と関わった仕事が望遠鏡の仕事だったのがきっかけで星に興味が湧いたらしい。」
「へーそうだったんですね。」
素敵な思い出だ。
と、敏和さんが真剣な顔をしてこっちを見た。
「広瀬 紗季さん、改めて伝えておきたいことがあります。」
「何でしょう?」
「私はこれからジュピターの幹部として社長を支えていく立場になります。私は弱い男です。この先何か困ったことがあれば紗季さんに支えて欲しい。もし私が間違ったことをすることがあれば、正して欲しい。人生の『めぐり』を一緒に歩んでくれませんか?」
と言って敏和さんが、コートのポケットからリングケース取り出し箱を開け、ダイヤモンドが光る指輪をだした。
「紗季さん、俺がこの先、路を間違わないよう『北極星』を付けて下さい。」
「はい、喜んで。敏和さんがおじいちゃんになっても、私がおばあちゃんになってもずっと一緒に同じ路を歩んで行きます。」
にっこりと笑う顔が涙で滲む。
嬉しくて涙が止まらない。
敏和さんが私の左手をとり、薬指にはめてくれた。
私の左薬指の上で光り輝く。
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