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「いや〜驚いたよ。真和さんの息子さんとは!」
「どこでお知り合いになられたんですか?」
「今から27、8年前か…真和さん自治省の官僚だったよね。岡山でリーディング・プロジェクトというのがその当時あって、美星の天体望遠鏡建設に関わっていたんだ。その時レンズメーカーに勤めていた私と知り合ったんだ。」
「え?お父さん、その場所、今年の夏キャンプで行ったよ。」
「そうか。星、きれいだったろ?」
「そんな仕事してるって言わなかったから知らなかった。」
「岡山の仕事が終わって、ハワイのすばる天文台に携わって…その頃はまだ真和さんと手紙のやり取りはあったんだけど、俺が結婚して紗季がハワイで産まれて帰国…その辺りから手紙のやり取りが途絶えてね。お父さんはお元気ですか?」
寂しそうに敏和さんが笑う。
「昨年の12月28日に他界しました。脳梗塞で倒れてリハビリしてかなり動けるようになっていたんですが、膵臓癌が見つかって、かなり進行していて、あっという間に末期癌で…亡くなりました。」
「…そうだったのか…」
お父さんの目にみるみる涙が溢れる。
「いつでも会える、と思っていてはだめだね…。」
「ただこうして広瀬さんとお会いできたのは父が引き合わせてくれたのだと思います。」
「そうかもな…。そうだ、絵梨ちゃんは元気?」
「母は…6年前に白血病で…亡くなりました。」
「絵梨ちゃんもか!?…。後悔しても仕方がないが、もっと早く手紙のやり取りをするべきだったかな…。」
お父さんの眼から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちる…。
「叔母が骨髄移植してくれたんですが…再発して、助かりませんでした。」
「ご両親とも早く亡くされて…。大変だったね。確か、君にはお姉さんいたよね?私がハワイへ行って半年後位に知らせが来て、その2年後かな、君の事も聞いてるよ。しかし、まさか紗季とお付き合いしてくれてるとはね…。」
「僕も驚きました。」
「あっ!だからか!実咲ちゃんが私に『今日、お姉ちゃんと会ったのは偶然じゃないよ、今日会う日だったよ』ってじいじが言ってるってお仏壇の前で話してくれたの。」
「実咲ちゃん?」
「お姉さんの娘さん、敏和さんの姪御さんよ。今、小学1年生。」
「そうか。引き合わせて頂いたのか…。」
お父さんが呟く…。
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