結納の儀

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結納の儀

  『高砂や この浦舟に帆をあげて    この浦舟に帆をあげて    月もろともに出汐の    波の淡路の島影や    遠く鳴尾の沖過ぎて    はや住江に着きにけり    はや住江に着きにけり』 謡曲 能の『相生』を市村先生が謳ってくれている。 敏和さんのお父様の一周忌法要が済み、年が明けて三月吉日。 今日は結納の日。 入籍は敏和さんの誕生日の5月6日予定。 結婚式は11月3日文化の日に決めた。 昨今、仲人を立てる人は少ないけど、敏和さんの今後の仕事の関係もあり、立てることにした。もちろん仲人は辻井さんご夫妻。 結納の儀の日、老舗旅館『柊家』で行なった。 着慣れない和服…。袴は履けるけど…勝手が違う。正座は平気だけど…。 それこそ『馬子にも…』かも。 横目でちらっと見る。 敏和さんはいつもと違う新調されたスーツ。 ビジネススーツと違ってかっこいい…。 お謳いが終り、食事が運ばれる。 帯が…食事出来るかな?ほどほどでいいか…。 仲居さんがビールをコップに注ぎ皆の手にグラスが渡った所で、社長(叔父様)がご挨拶をされる。 「本日はお忙しい中、武田 敏和君、広瀬 紗季さんの結納の儀にお集まり頂きましてありがとうございました。 無事結納を済ませたことに感謝いたします。僭越ながら武田君の父親代わりとして婚礼の儀も私が努めさせて頂きますので宜しくお願い致します。 じゃ、敏和君、一言お願いします。」 「本日はお忙しい中、私と広瀬 紗季さんの結納の儀にお集まり頂きましてありがとうございました。 これから二人で支え合い明るい家庭を築いていきますので、今後とも皆様のご指導ご鞭撻を宜しくお願い致します。」 と頭を下げ『紗季…一言。』と促され… 「この度は敏和さんと私の結納の儀にお集まり頂きましてありがとうございました。 皆様のお力添えを頂戴しつつ、敏和さんを支えていきたいと思いますので宜しくお願い致します。」 緊張する…胃が飛び出そう。 「さてさて、畏まるのはここまでで、楽しく食事しましょう。」 と叔父様がおっしゃった。 「では、辻井に乾杯の音頭お願いするよ。」 「では、ご指名なので…。このハレの日に参加できたことに感謝し、敏和君と紗季さん、末永くお幸せに。乾杯!」 「「乾杯!!!」」
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