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救護した人は課長のお姉さん!?
すると、救急搬送の出入り口から駆け寄ってくる人が見えた。
「実咲!」
「敏にい!」
「えっ?!武田課長?!」
「えっ!広瀬?」
瓢箪から駒。
美帆が言った通りだったのだ。
「小学校から姉さんが倒れて、ここに搬送されたって連絡が入って駆けつけた。」
息を切らせて課長が駆け寄ってくる。
「敏にい!あのね、あのね、お姉ちゃん凄かったんだよ!カッコよかったんだよ!」
と、興奮した口調で実咲ちゃんが話す。
「実咲が見た時ママが倒れてて、このお姉ちゃんが、一生懸命心臓マッサージしてくれて、それでね、それでね、ママが目を開いてくれたの!」
課長は実咲ちゃんの頭を撫でながら、
「そっか、よかったな。ママを助けてもらったんだな。」
課長、真っ直ぐ私を見て
「広瀬、俺からも本当に感謝する。ありがとう。」
武田課長が頭を下げる。
「いえ、あっ頭上げて下さい。その場にたまたま居合わせまして。実は先週、大学のボランティアサークルのOGでお手伝いした救命訓練の講習会があったんです。そこでの訓練が活用できたんです。」
「さっき、救命士さんと話したんだが、初動対応がよかったから助かったらしい。あと、数分でも蘇生処置が遅れていたら危なかったらしい。広瀬のこと凄く褒めてたぞ。」
(めちゃくめちゃ照れるよぉ…。)
「8分です。」
「8分?」
「救急車が要請を受けて現場に到着するまでの時間はおよそ8分。心肺蘇生が1分遅れる毎に治療成功率は7~10%低下して心臓停止が5分以上になると意識の回復が困難になるそうです。8分−5分=3分。この3分間何もしないでいると死んでしまうので、ためらわず胸骨圧迫をするように指導されました。」
「AEDを使えばすぐ蘇生できるんじゃないのか?」
私は首を横に振って、
「違うんです。AEDは一時的ショック療法なので心臓が動かなければ酸素は体中に回らず胸骨圧迫をやり続けなければ心臓は動かないそうです。」
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