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程無くして、看護師の方から声がかかった。
「金居 奈央さんのご家族の方、Dr.とのお話しがありますので処置室へお入り下さい。あと、金居さんは病棟3階の307号室へ入られましたので面会可能です。Dr.とのお話しの後、面会してくださいね。」
「分かりました。」課長が答え、
「悪いが広瀬、Dr.と話が終わるまでここで実咲と待っていてくれないか?」
「いいですよ。」
「実咲ちゃん、ここで私と少し待ってお母さんに会いに行こうね。」
「うん。」嬉しそうに実咲ちゃんが笑う。
課長が処置室へ入る。
オレンジジュースを飲みながら実咲ちゃん
が話しかけてきた。
「お姉ちゃんは敏兄と、おんなじ会社なの?」
「そうだよ。しかも同じチームで課長さん、
私は課長の下で働いているよ。」
「えーそーなの?!」
実咲ちゃんが嬉しそうに笑う。
「ほんと、さっき課長が病院へ入ってきたからビックリしちゃった。」
私も笑う。
「ねえねえ、敏兄は会社ではどんな感じなの?怖い?優しい?」
目をキラキラさせて訊ねる。
おませな顔がとっても可愛らしい。
実咲ちゃんは目を引く美人さんだ。
課長も端正な面立ちだけど、お母さんはまた違ったタイプの綺麗な面立ちだなと思ったが…
実咲ちゃんはお母さん似なのかなぁ。この家系は皆、美形一族だと思った。
「私は怖いと思ったことはないけど、みんな仕事には厳しいっ!て言ってるかな。あっこのことは課長にはナイショね。」
私は自分の口に人差し指を立てた。
「へー、実咲は敏兄から怒られたことは無いからなぁ。土曜と日曜はいっつも合気道に一緒に行って帰ってきて宿題みてもらうの。」
「合気道?実咲ちゃん合気道習ってるの?」
「そだよ。敏兄もだけど、パパも一緒にやってるの。」
「へーそうなんだ。実は私も高校と大学の部活でやってたよ。2段まではなんとか、がんばって取ったよ。」
「えー!お姉ちゃんも合気道できるの?一緒にやろうよ!」
「えっ?いや…ちょっと仕事が忙しくてねぇ…。」
ちょっと言葉を濁してしまった。
就活で履歴書に少しでも記入できる事を多く書き加えたくて高校から始めた合気道を大学まで続けて、なんとか2段までは取得していたんだけど、入社してからというもの離れていた。
「お姉ちゃん!一緒にやろ!実咲、お姉ちゃんとやりたい!」
かっ可愛い!
こんな可愛い子にお願いされたら絆されそう!!
『ガラッ』
処置室の引き戸が開き課長が出てきた。
「実咲、ママの病室行くぞ。」
「あっ敏兄、あのね、お姉ちゃんも明日の合気道連れてって!」
(えっ実咲ちゃん、明日いきなり連れてくの!?)
「ん?なんで?」
課長が怪訝そうな顔をする。
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