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「このお姉ちゃんがママを助けてくれたんだよ!」
と、実咲は母親に、嬉しそうに話す。
「なんとなく覚えてるよ。」
彼女は実咲ちゃんの頬を両手で挟み、目を見つめ
「心配したでしょ?ごめんね。」
と抱きしめた。
「絶対、ママは大丈夫!ってお姉ちゃんが言ってくれて、みんなで応援したから助かったんだよ!」
「そうか、みんなで応援してくれたんだね。」
彼女が涙ぐんだ。
「えっと、お名前は…」
「広瀬 紗季です。」
彼女が私の手を取り強く握りしめた。
「広瀬さん、本当に助けて頂いてありがとうございました。この子をおいて私がいなくなるなんて考えられない。後で主人からもお礼をさせて下さいね。」
「お礼なんていらないですよ!こうして元気にお話しして頂けたことが私も嬉しいので!」
私も彼女の手を強く握り、
「あと、課長のお姉さんだったのもびっくりでしたけど。」
と笑った。
「ジュピターの社員さんなの?」
「はい、今年の4月から課長の企画営業2部に所属しています。」
「そうなの!あなたが敏和のチームにいてくれるなんて!ほんとありがとう!」
「姉さん、Dr.からの話で、一応今日は病院泊まって、明日の朝もう一度MRI撮って何もなければ退院だって。」
「あっ今日の夕方、誠司さんが帰って来るんだけど、連絡どうしよう。」
「おれ、誠司さんに連絡しとくよ。」
「ありがとう。じゃお願いするわ。」
「面会時間までに間に合いそうだったら来てもらう?あと、必要な物持ってくるよ。」
「そうね、着替えとスマホお願い。今日に限って家に置いてきてしまって…。」
「そうだ!すみません!ボールをぶつけた子!えっと、ひろき…?君だったけ、その子が凄く落ち込んでて、申し訳なかったと言っていました。彼は故意にボールをぶつけた訳では無いので、許してあげて欲しくて…本人からも誤りたいと言っていたことを伝えて欲しいと頼まれました。」
「妹尾 弘樹君ね、あの子のお母さんとはママ友だからスマホ持ってきてくれたらすぐに連絡するわ。」
「よろしくお願いします。」
「たまたま、運が悪くボールが当たって気を失って…弘樹君の事だから凄く心配してくれてたでしょ?」
「ちょっと見ていられないくらいに動揺していました。」
「でしょうね。」
奈央さんが優しく微笑む。
「実は夢なのか、ホントなのか、気を失ってふわふわ空へ飛んでったの。空の上で両親が笑って『会いたかった、でもまだお前は来る時じゃない』って言われて…でも、少し話が出来たので嬉しかったわ。」
「えーじいじとばあばあと、お話出来たの?いいなぁ、実咲も話したい!」
「『いつもみんなを見てるよ』って嬉しそうに教えてくれたよ。」
と実咲ちゃんを抱きしめながら奈央さんが言った。
「じゃ、俺等は一旦帰るわ。」
「頼むわね。」
「では、失礼します。」
我々は病室を後にした。
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