恋は異なもの味なもの

会議室にて。

「では、佐伯部長よりご挨拶を賜りたいと思います。」
三宅君に促されて部長が前に出る。
「皆さん、おはようございます。」
「「おはようございます！」」皆一斉に挨拶する。

「本年度より企画営業部1課2課の部長を拝命いたしました。佐伯　智成(さえき　ともなり)です。昨年も企画営業部の部長でしたが、本年度より1課、2課と部を細分化して、より細かなマーケティングリサーチとその分析によりより良いサービスと企画戦略を行っていきますので、皆さん、お互いを高め合い私も含め切磋琢磨していきましょう！」
部長が頭を下げる。
パチパチパチパチ！
皆が拍手する。
佐伯部長、恐らく52歳位。スラットした長身のイケオジだ。
「続きまして、企画営業部　1課の北川課長、ご挨拶お願いいたします。」
40代前半の小柄な女性が前に立つ。
「北川　葉子(きたがわ　ようこ)です。
この度、企画営業部1課の課長を拝命しました。昨年は佐伯部長の元で、チーフをしていましたがこの度、課長を拝命いたしました。
私事ではありますが、中2と小5の2児の母親でもあります、なので何かとご迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが宜しくお願い致します。」
北川課長が頭を下げる。
素敵！お母さんで課長さんって！
パチパチパチパチ！
「続きまして、武田課長、宜しくお願い致します。」と三宅君が武田課長に挨拶を促す。
1歩前に出て武田課長が話す。
「本年度より企画営業部2課の課長を拝命いしました。武田　敏和(たけだ　としかず)です。昨年、一昨年と滋賀営業所で営業チーフをしておりました。本社勤務となり新たな気持ちで邁進していく所存です。どうぞ宜しくお願い致します。」
武田課長が頭を下げる。
パチパチパチパチ！

「では、これより各課にてオリエンテーションに入ります。1課はこのまま会議室にて行います。2課は10階フロアーのミーティング室にてお願いいたします。あと机の上のレジュメもお持ち下さい。」
三宅君が声を掛ける。
我々は、立ち上がり、ゾロゾロと外へ出る。

「びっくりした！」
「私も、顔が似てると声も似るのかな？」
「思った、声もそっくりだった！」
美帆とあまりにも武田課長が『Take』に似ていることを話す。
「しかし、身近に推しに似た人がいるって紗季、ドキドキするんじゃない？」
とニヤニヤしながら美帆が私をみる。
「いやいや、容貌が似てても中身は違うじゃん！私は『Take』の顔じゃなくて、歌が好きなの！」
失恋して落ち込んだ時、ラジオから流れる歌声に魅了され、そこからファンになり、就職して仕事で辛い時も彼の歌で励まされたのだった。
「はいはい。そういうことにしてあげます。」
まだニヤニヤしてる。
「上からですね〜お姉様。」
と私も笑う。
美帆とは屈託なく会話が出来るから楽しい。