美少女

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美少女

 私は16歳、ママは43歳。  母子家庭だけど、貧しくもなく、苦しくもなく、つつがなく暮らせている。 でも、私には三つの恐怖がある。 これは、とある美少女が直面しているホラーなお話である。  私のママはとてもきれいだ。  料理上手で気立ても良く、勉強も教えてくれるし、無職なのにリッチだ。  ママはなんでも上手だが、他の何より上手なものがある。その特技は、みなさんが容易に想像できるレベルを超越している。 それこそが一つめのホラー。 《若づくり》  ツインテだってしちゃうし、リボンふりふり、ニーソも履いちゃう。  ぬいぐるみのリュックも背負うし、私の制服を着て街を歩くこともしちゃう。  属性変更はお手のもの。病みキャラからメインヒロインまで何だってできちゃう。  だから男性にもお金にも困らない。  毎日誰かとエッチしてても、毎日が処女でいられる。  ママいわく「相手が違えば毎回初めてよ」だそうだ。  そのママのお風呂上がりのすっぴんは、あまりの落差に毎日ぎょっとする。 誰、このひと・・・。  ママがお風呂から出ると、私は浴室に近づけない。この恐怖は家の中に妖怪がいるようなものだ。  そんなママも、男の人からお金を引き出す際に、ある程度は年齢を告げなければならない。  場合によって、私は妹になり、姪っ子になり、時には娘だと紹介されることもある。 それこそが二つめのホラー。  私は化粧したママによく似た美少女である。  ママを抱いた男性は、私にも食指を伸ばしてくる。  彼らは口を揃えたように言うのだ。 《ぼくのことはパパと呼びなさい》  私には数え切れないほどのパパがいる。  血縁上のパパには会ったことがないが、性的欲望をちらつかせるパパはすごい数にのぼる。  ママは彼らの性的欲望を発散してくれている。  無論、ママが私を守る気持ちなんてあるわけがない。  楽して稼ぐためだと宣言してるくらいだから、本当に楽なんだろう。  私は私で身を守らねばならない。  日々増殖する無数のパパというホラーは、いつだって私の純潔を狙っているのだから。 とは言うものの、私もバイトしてお小遣いを得る必要がある。  人にこき使われるのは苦手だし、私の特技と言えば美少女なことぐらいだ。  パパ活というバイトが一番私を活かせるし、幸い私には無数のパパがいる。  食事するだけでお小遣いがもらえるなんて、やはり美少女に生まれたご褒美だろう。 でもこれが三つめのホラー。 《世の中ちょろすぎて普通が分からない》  簡単にお金を稼げて、笑顔ばかりが上手くなる。恋をしなくても男性に褒められ、そのうえ美味しいものが食べられて、隠れ肥満になっている。  ハダカになることはないから、服装でウエストをごまかしているうちに、脂肪が固定されてきた。これを落とす努力の原動力たる恋には、今のところ興味がない。  普通でいられなくなると、堕落や破滅があちらこちらで待ち構えているようになり、気を抜けば堕落行き列車に乗ってしまいそうになる。 こわい。 こわい。 何と言うホラーだ。 私が若づくり妖怪の娘として美少女に生まれたばっかりに!  こうなったら細見えコーデを学ぶしかない。  脂肪吸引も選択肢に入れよう。  私はこのホラーに打ち勝ってみせる。  あ、そうそう。  これもホラーだったね。 《美味しいものはこわい》  これ、美少女を壊す究極のホラーだよ、ガチで。 end.
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