大手術

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俺の右手が震えている。 どうしたものか。 今日は大事な手術が控えているのだ。 大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)の治療のため、心臓の大動脈弁を人工弁に取り換える大手術だ。 人工心肺装置を使用し一時的に心臓を止め、その間に手術を終わらせる。 患者にはとても負担のかかる手術であり、失敗は許されない。 そんな大手術を前に俺の右手が震えている。 「どうかされましたか?」 いつの間にか傍に立っていた看護師が心配顔でこちらを窺っている。 見られた! 彼女はベテラン看護師。隠し通すことも出来ないだろう。 俺は覚悟を決め、正直に伝えることにした。 「いや、さっきから右手が震えるんだよ」 俺の右手を眺める看護師は落ち着いた素振りで、 「まあ、大手術が控えていますから。緊張しているんですかね」 緊迫感のない返答に心配になった俺は問いかける。 「手術大丈夫かな」 それを聞いた看護師はにこやかな笑顔を浮かべ、子供を諭すように言った。 「心配しなくても大丈夫ですよ。あなたは手術中、全身麻酔で意識はないですから」
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