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それは少しの眠りの間に訪れた夢・・・。
しばらく忘れそうになっていたあの二人にまつわるお話・・・。
ウトウト・・・としはじめた私に、しばらくぶりに訪れた二人のイメージだった。
まだ太陽が昇り始める前の少し薄暗い時間に、彼女はいつも家を出る。
柔らかい太陽の光がゆっくりと増していき、その日差しが石畳を照らし始めていく。その中を彼女は、まだ少し寝ぼけている頭を覚まそうとしながら、広場を抜け、そして街はずれにある市場へと歩いて行くのだった。
仕事場に辿り着くと、いつものように店主はまだ来ていなかった。
店主は開店の少し前にやってくることが多くて、開店までの準備は彼女が殆どすることになっていた。
毎日の作業なのでもう大分慣れてきてはいたが、やはり重そうな木箱を運ぶ
のは苦労がいる作業のようだった。
木箱の中には赤色のリンゴが入っていた。
やはりこれは重たいんだろうなとイメージを見ている私も思った。
他にも果物や野菜の木箱があり、それぞれ所定の位置があるらしく、順々に店先の並べていく。ここは青果店のような店らしい。
今回の夢でもまた、彼女は少年の様な格好で、半ズボンを履き、帽子をかぶり
髪の毛は短かった。ぱっとみれば少年にしか見えない。
そしてなにやら大分固そうな靴を履いているようだ。
どうも先ほど石畳を歩きずらそうに感じていたのはこの靴のせいらしい。
年頃は前に見たイメージの時よりも幼く見える。
年齢にしても女の子だということを考えても、よくこの仕事を勤められているなと私は感じた。
開店間近になると店主がやって来て、準備が整っているかをあれこれとチェックしている。いつもこの時間までに間に合うように早く家を出て必死に準備をしている彼女は不安に思うことはないようで、準備万端だという気持ちで店主の方に体を向け、返事をしている。
この店は市場の中でも、端の方にあるらしかった。
広場の方向からお客がだんだんとやって来て、市場に活気が出てくる。
早朝の仕事をしに出掛けるのだろうか・・・出勤の途中にそこを通っていく者たちもいるようだ。そんな人の流れを彼女は眺めている。
すると、ふと声を掛けられる。
「あれ?もしかして・・・」
その声に振り向くと、見知った男が立っていた。
少し驚いたような表情で、そして、その後の言葉は続かなかった。
しまった・・・そんな困ったような彼女の強い感情が私に流れ込んできた。
一体どうするんだろう・・・イメージを見ている私もはらはらし始める。
いつも面白いと思うのはこれが過去の事だとしたら、今私がどう思おうと先に起きることは変わらないだろうに、やっぱり私も今の時間で見ていても気をもんでしまったりはらはらするということだ。
彼女は作業をしながら後ろを向いて、彼がそのままどこかに行ってくれることを願っていたようだったが、彼は続けて声をかけてきた。
「ここで働いてたのか。知らなかったよ」
「うん」
仕方なく振り向いて、それでも忙しそうに動きながら、軽い返事だけする。
「いつから?」
「もう一か月くらいかな」
話しながらも今の状況をどうやって誤魔化そうかと彼女は考えているようだったが、もう自分だと知られてしまっては仕方ない、と覚悟を決めなくはと思ったようだ。
どうしよう、自分が女で年も誤魔化していることが分かると仕事が無くなってしまう・・・そんな彼女恐怖感が私に伝わってくる。
幼いながらも前と同じように彼女が働かなくてはいけない理由があるみたいだ。
どうにか頼み込んで秘密にしてもらわないと・・・そう考えていると、
彼は彼女の手を軽く引いて、店の端まで来させると、店主に気づかれないようにそっと声をかけた。
「この仕事は大変だろう?良かったら俺がしている仕事を紹介できるよ。
やる気はあるか?」そう彼女を誘ったのだ。
なるほど。
このイメージを見たことで、彼女と彼がなぜ一緒にいるようになったのか私はやっと理解できた。
元々顔なじみだったらしい二人は(もしかしたらご近所で幼馴染だったりするのかもしれない)この市場で会ったことで新しい関係へと発展していったのかな・・・。
今回もまた今の私が全く知りえないはずの二人の関係の始まりの理由をイメージが教えてくれたらしい。
なんだか微笑ましくもあり、これから友情から恋へと発展していくのかと思うと複雑な気持ちにもなり、(この時代で男装したままだったし・・・)。そしてこの前に見たイメージで、二人の関係性に感じた温かさの理由、それはこんな自然な結びつきから始まったからだったのかと、すっと腑に落ちた気がしたのでした。
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