五月十五日 火曜日

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五月十五日 火曜日

─6─  大丈夫だと言ったものの、万が一、楓太の身に何かあったらと思うと、不安が頭の中で膨らみ、ほとんど眠ることが出来なかった。  起きるには少し早いが、昨日のメッセージを確認してみることにする。  ソファから体を起こすと、体から変な音がが聞こえた。二日連続ソファで寝ると、体は悲鳴を上げるようだ。    コーヒーを淹れながら漠然と自分の年齢のことを考えていた。  俺もいつの間にか二十六歳になり、年々、楓太との歳の差を感じるようになってきた。子供の頃はそんなに気にはならなかったが、歳を重ねれば重ねるほど、五歳差という体力差を感じ、これからはもっと顕著になっていくだろう。  歳の差もあり、体格も似ていない俺達だが、何をするんでも息はピッタリ合い、俺達をよく知る周りの人からは、双子みたいだと言われる。そんな相棒とも呼べる弟を失うなど、絶対にあってはならない。  弟は絶対に俺が守る。  カップを手に、再びソファに腰掛ける。  ノートパソコンを開くと充電がわずかになっていて、慌てて充電する。  受信ボックスには、約束通りメッセージが来ていた。相手が読む読まないは置いといて、教えてもらった連絡先にメッセージを残しておこう。  こちらの要件を打ち込み、送信しようとした時、昨日の楓太の言葉を思い出した。 「人の気持ちか……」  自分が打ち込んだ文章をもう一度読み返してみる。 「単刀直入でわかりやすいが、これでは不愉快になるかもしれないな……」  昨日の文章を思い出しながら手直しする。 「こんなもんかな」  さて、あとはメールを読んでくれるかどうかだ。いきなり知らない人からメールが来たら不審に思うはず。しかし、内容が内容なだけに、無下にもできないたろう。なるべく、情に訴える文章にしたつもりだ。    窓の外を見ると、東の空が明るくなってきていた。時計の針は四時半を指している。  面に触れてから、既に十三時間が過ぎようとしていた。これを考えると、五日などあっという間。頭の中では、時限爆弾がカチカチと音をたてながら、カウントダウンが始まっている。  楓太の不安を少しでも減らすように、俺は何があっても取り乱してはならない。冷静な目で判断し、情報を精査し、呪いという目に見えない敵に立ち向う……。  そもそも、呪いとはなんなんだ。特定の人を呪うならまだしも、これなら無差別テロと同じじゃないか。誰の呪いかも、何に対する呪いかもわからず、知らないうちに命を落とす。たまったもんじゃない。それに、この呪いは生きた人間が仕掛けたものなのか、死んだ人間が生前の恨み辛みで呪っているのか、これさえも定かではない。    なにより、呪いなんて本当に存在するのか? 偶然が重なりあっただけじゃないのか?  なんにせよ、こんなくだらないもののせいで俺の弟を奪われてたまるか。絶対に突き止めてやる。
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