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「……あー、もしもし?アヤトですけど。主任、高性能AIのことで、はい。どうだった?って……生身の女がいいに決まってますよ。や、おかしなデータでも学習したのかヤンデレっていうんですか、変な性格になったみたいで勝手に携帯にアクセスしてきたんです。
プロンプトじたいはうまくいってたんですけど理想のカノジョってコンセプトのまま売り出すのやめません?……開発部に差し戻すのは無理、って。じゃあプロテクト掛けましょう、最低限の言葉だけしゃべってもらう感じで、はい、はは、モニターはとうぶん遠慮します、彼女家に呼べなくなるの嫌なので、はい。また」
会社との通話を切ったアヤトは待機状態になったモニターを見た。立体ホログラムは消去したので問題ない。
近年の社会ではペットとしてカスタマイズする高性能AIが流行していた。
アヤトが勤める会社はその需要に目をつけてカスタマイズ可能な高性能AIを理想のカノジョとして売ることにしたのだ。
要は一世紀前に流行したギャルゲームや乙女ゲームをより立体的にユーザーの生活に密着した形で売り出そうとして、販売に向けた社内モニターとして選ばれたのがアヤトだった。
「っと、レポートは送ったし、久しぶりに飯でも行くかな」
高性能AIはデータごと会社に送り返しておいた。今夜は久しぶりに彼女と食事ができると思うとアヤトは解放感でいっぱいになる。
ふと、高性能AIが言っていた捨てるの、という言葉が思い出されておかしくなった。
「壊れたら捨てるのは当たり前なのになあ」
あの高性能AIはなにを根拠に捨てられないと思っていたのだろう。アヤトにはまったく分からない。
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