キミは理想のカノジョ

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 ユウカの朝は早い。 「おはよう、アヤト君」 「んん……あと五分……」 「二度寝しないで!ほら、起きて。暖房つけたしフレンチトーストも食べごろだよ」 「……フレンチ」 「コーヒーも淹れておいた」  室内の暖房は二十度設定にする。 温めすぎるとアヤトはまた寝てしまうのだ。 空気が乾燥していると寒く感じられるのであって、加湿機能も同時につけてしまえば寒さは感じられない。  着替え始めたアヤトを室内に残してユウカはキッチンでコーヒーを温める。リビングに起きてきたアヤトは表情を緩ませた。 「いい匂い」 「それはどうも。早く食べないと遅刻しちゃうよ」 「えっ、あと何分?!」 「一時間と三十分二十三秒」 「なんだ、一時間もあれば余裕じゃないか」 「だめだめ、アヤト君はすぐ油断して遅刻する」  ユウカの言葉にアヤトは口を尖らせる。とはいっても不満そうな表情なのは形ばかりで実際はユウカとの会話を楽しんでいるのだろう。 「遅刻しないよ、天気は?」 「退勤時間の午後六時半には雪が降る」 「傘は必要?」 「折りたたみ傘で充分、でも風が冷たいから厚手のコートが必要かな」 「コートね、本当にユウカがいてくれてよかった〜、理想のカノジョって感じ」  おいしそうにフレンチトーストを頬張って言うアヤトにユウカはため息をついた。 「アヤトの人事査定AIまではどうにもできないこと、分かってる?」 「分かってる分かってる」  適当に返事したな。 ユウカはアヤトの面倒くさがりな性格を欠点であると思っていたが時間がないので言わないでおいた。 「いってきます」 「いってらっしゃい、車、自動運転とはいえ気をつけて」 「おう」  あわただしく準備を済ませたアヤトを見送るとユウカは自動食器洗い機を作動させた。廊下にある鏡には黒髪をボブにしたユウカが映っている。  アヤトがユウカを選んだのは好きな清楚な女性アイドルに似ていたからなのを知っていた。それでも手が届かない女性アイドルよりもユウカをアヤトは選んだのだ。 「理想のカノジョ、か」 テレビモニターに再生したアヤトの声をBGMにして掃除に向かった。
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