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2/6 定食屋で出会った小柄な同僚
俺は会社の昼休みには、行きつけの定食屋で日替わりランチを食べる。特に火曜日のからあげ定食がお気に入りだ。
からあげに明太子が入っていて、ピリ辛で何とも美味しい。かじるとサクサクとした音を立てる。この音はもはやオーケストラに匹敵する音色だ。
そしてこのサクサクさが、衣の内側の肉の柔らかさを引き立ててくれるのだ。一口噛むごとに、ジューシーな肉汁がジュワッと出てくる。さらに噛み進めると、明太子の辛さが少しずつ溶け出てきて、肉のうまみとほどよく混ざり合う。
……唐揚げはもはや芸術品だ。
しかもここの店が最高なのは唐揚げだけじゃない。安月給サラリーマンのお財布に優しいのだ!ご飯・味噌汁おかわり自由でコスパが最高!
さらにさらに、裏メニューでお茶漬け用の出汁も注文できる!刻みのりや明太子もついてくる!最高のランチである!!
とはいえ、がっついている所を人に見られるのは少し恥ずかしい……という心配もない!
少し会社から距離があるため、俺だけが知っている穴場なのだ!
と思っていた。……今日までは。
今日、いつものように来てみると、ここに同じ会社の人が来ていたのだ。ちなみに向こうは気がついていないようだった。
笹川ゆう。新卒で色白の男性社員だ。
部署は一緒だがあまり話したことはない。今日はたまたまこの店に来たのだろうか。それともいつも来ていたのだろうか。気がつかなかった。
というか、小柄な彼にはここの定食は多くないか!?ごはん一杯でもかなりのボリュームだぞ!?
……と、はらはらしながら見ていたのだが、彼の食いっぷりは素晴らしかった。
まずからあげ2個でごはんを茶碗半分、一瞬で平らげた。
ここで既に俺は彼を見直していた。まるで息をするかのように唐揚げが吸い込まれていった。
そして漬物・卵焼き1つと共に、残りのご飯と味噌汁を一杯、完食した。
うん、いい流れだ。ここの卵焼き、出汁がしっかりきいていて、しかもあつあつでぷるぷるだから、おかずとして最高だよな!
……彼があまりにも美味しそうに食べるものだから、自分もつられて、いつもより味わって食べてしまった。
時折、キャベツに机の上のマヨネーズをたっぷりつけて食べていたのも、通だった。
そしてご飯をおかわりし、唐揚げを1つ残して、ご飯を半分食べた。
さらに、最後の1つの唐揚げと、卵焼き1つをご飯の上で砕いた。追加で定食の皿の端に乗っていた大根おろしを乗せ、出汁と刻みのりをかけてお茶漬けにして食べた。
……できる。
できる食べ方だ。
素人では無いようだ。
だがここで話しかけるのも少し恥ずかしかったので、気がつかないふりをした。人と会いたくないから会社から遠くの定食屋に来ているのかもしれないし。ってか最近の若者のこと、よく分からんし。
またこの定食屋で会えたら話しかけてみよう。
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