2/13 定食屋での二度目の邂逅

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2/13 定食屋での二度目の邂逅

笹川くんを定食屋で見かけてから一週間が過ぎた。あれから笹川くんは定食屋には現れなかった。あの日だけたまたま来ていたのだろうか。 そう思いながら定食屋へと向かったら、入り口で笹川さんが目の前に並んでいた。 「あ。」 俺は思わず声が出てしまった。 笹川くんは俺の声にびくっとしてこちらを振り向いた。 すると大きな目をさらに大きくしてこちらの顔を見た。 「えっと……源課長?」 「ああ。驚かせてすみません。この定食屋で会社の人と会うのは初めてだったので。」 「そうですね。会社から少し離れてますもんね。」 そして2人ではははと愛想笑いをした。 ここでそのまま別れるのは不自然、というかむしろ気まずい気がして、 「その、せっかくですし、一緒に食べないか?初任給じゃここの外食もたいへんだろ?おごってやるよ。」 と誘ってみた。 笹川くんも同じ考えだったのか、 「え、ええ!良いんですか!?ぜひ、ご一緒したいです!」 と返してくれた。 そして2人で少しぎこちなく世間話をしながらテーブルに向かった。お互いの仕事のこと、同僚のこと、上司のことなど、当たり障りの無い話題が続いた。 そうこうしているうちに定食が運ばれてきた。 するとどうだろう。 この日は笹川くんはおかわりをしなかった。 出汁もかけずに普通に定食を食べた。 あの日見た笹川くんはすごくお腹が空いていたのだろうか。 それとも幻だったのだろうか。 そして笹川くんはこの後寄りたい場所がある、とのことで、店を出るとそのまま別れた。 私は早く別れたことが少し残念だったが、初めての会話としてはちょうどよい時間であったかもしれない。
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