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3/5 夢のご飯のお供パーティー
また1週間が経った。この前の笹川くんの赤面が忘れられない。
何とかもう一度話ができないだろうか。
その日は午前中から笹川くんの様子をそわそわしながら見ていた。そして彼がお昼に立ったのと同時に俺も席を立った。
「あの……笹川くん!」
「は、はい!」
無理やり笹川くんを呼び止めてしまった。
「あの……先々週なんだけど、定食屋で目が合った時に少し気まずそうな顔をしていたから気になって……。」
「あ……ああ、すみません。えっと、食べてるところ見られたかなって恥ずかしくなっちゃって……。」
「い、いえ、最後にチラッとしか見ていないです!」
「そ……うなんですね!すみません!」
「はい、大丈夫ですよ!」
「あ〜良かった、私、てっきり、ご飯を3杯おかわりしたところを見られたかと思っt……。」
俺と笹川くんは同時に、あっ、という表情になった。
笹川くんは顔を真っ赤にしてしまった。
定食屋に着くまでの道で、笹川くんは色々なことを話してくれた。
本当は大食いだけど、小柄な見た目のせいで大食いがバレると引かれてきたこと。彼女に言われた「意外とおじさんみたいな食べ方するんだね」という指摘がコンプレックスなこと。火曜日以外のランチは節約も兼ねて、小食のふりをして社食で食べているけれど、火曜日だけは他の社員の目が届きにくい離れた定食屋で思う存分からあげ定食を食べるのが好きなこと。
「すみません、食事量がコンプレックスで、それで見られたと思って恥ずかしくなっちゃって、勝手に自爆して……お恥ずかしいです。」
笹川くんの謝る姿は何とも健気だった。
「いいえ……!というか、こちらこそ謝らなければなりません。」
「どうしてですか?」
「実は俺、笹川くんの食べているところ、きちんと見ちゃっていました。」
「……え!?」
「実はその前も見ちゃっていました。その時の笹川くんの食べ方が、何か気持ちよくて、俺は気に入っていました。……でも他人の食事をじいっと見るなんてマナー違反ですよね、すみません。」
「いや、それ、は、だいじょう、ぶ、ですけ、ど……。」
笹川くんが苦笑いしていた。
俺がきもいと思われることで、笹川くんの罪悪感を減らせたのならばこれでいいんだ。
こんな会話をしているうちに、定食屋に着いてしまった。
さて、今日は笹川くんはどのくらい食べるのだろうか。自分の好きなだけ食べてほしいが、大食いに罪悪感を抱くのもやめてほしい。どうすればいいだろうか……?
その時、俺の頭にある考えがひらめいた。
「あの、笹川くん。これはただの提案なんですけど、」
「はい?」
「ご飯のお供パーティ、しませんか?」
この定食屋ではプラス0〜30円ほどでたくさんご飯のお供(漬物、牛しぐれ、明太子、ツナ缶、生卵、鮭フレーク、とろろ、納豆、いくら、ねぎ、のり、などなど。)をつけることができる。
「ここのご飯のお供を、2人でいっぱい頼んで、シェアしませんか?」
笹川くんの顔が輝いた。
「やってみたいです……!」
そう、俺も共犯になってしまえばいいのだ。
そして、からあげ定食2つと、ご飯のお供をたっぷり注文した。
「すごい、からあげ・とろろ・明太子ご飯、やみつきになる……!」
「あまり食べたことなかったんですけど、牛しぐれ、最高ですね!ねぎ・生卵との相性も抜群!」
「鮭フレークといくらで親子丼作りました!当たり前だけど、すごく美味しい!」
「ツナ缶も載せてみませんか!?」
背徳感にまみれた至福のひと時だった。
最後に全部のせして食べた。味がケンカするかと思いきや、素晴らしく美味しくなった。
「ふ~……さすがに少したべすぎましたかね……。」
「でもすっごく美味しかったですね!」
「ですね!」
そう言うと2人で笑いあった。美味しいものをお腹いっぱい食べる。それだけでものすごく幸せな気持ちになれる。
それとも、共犯者がいたからこそ、こんなに幸せな気持ちになれたのだろうか?
「あの……よろしければ来週の火曜も、ご一緒させていただけませんか?」
俺は少し勇気を出して誘ってみた。
「ええ!喜んで!」
笹川くんは満面の笑みで答えてくれた。
ちなみに、この日の午後、俺は糖質の取りすぎで眠くなってぼんやりしていた。
それに対して笹川くんはきびきびと働いていた。
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