祖母

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祖母

「それがこの恋心を吸い取るスポイトットの秘話なのよ。  この魔道具はね、”片思い”の語源が”肩重い”から来ていると言う言い伝えから、恋にはきっと質量がある。質量のあるものは移動することは可能である。その考えから開発された物らしいのよ」  と、祖母はモナにそう言うが、モナも12歳である。それが祖母のジョークであると直ぐに判断してしまう。 「お祖母ちゃん、真面目な顔でそんなジョーク言っても分かるんだから。そんな事より何故王都でそれが必要になったの?」  さらっと流してしまう。  祖母は、「ジョークのようだけど、本当なのよ」そう言いたかったけれど、モナは信じてくれないと思いその話はそこで飲み込むことにした。 「ああ、それね。それは、執事長さんの立ち話が聞こえて知ってしまったのだけれど、どうも王妃様がある側近の方に恋をしてしまったらしいの。  執事長さんはその恋心を、王様にバレない内に吸い取ってしまいたいらしいのよ。  これって一大事よね」  祖母がそう応えると、それに、 「これも内緒の話だね」  モナが人差し指を口に添えてそう確認してくる。 「ええ、もちろん内緒にしてね」  祖母も人差し指を口に添える。 「分かった、お祖母ちゃん有難う」 「どういたしまして…」  そう言うと、祖母はまた椅子に揺られながら目を閉じる。  モナはそれを見て、自分の部屋に戻って行く。  部屋に戻ったモナは、今回の事はスポイトットの使用も止むを得ないと判断したから、きっと金庫の開け方のヒントを鍵師に教えたのだろう、そう思った。  そう思うと、きっと祖母は他にも口を噤んでいる秘密の話があるのではないか?モナは、そう想像する。  だから、これからはもっと祖母と話をしてみよう。  もっと話して昔のことを聞きだしてみよう。  モナはそう思う。  きっと祖母の痴呆は演技なのだ。  秘密にしている話を聞かれない為の演技なのだ。  モナはそう確信するのである。 <おわり>
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