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翌日王宮から来た執事長一行とモナの父は、金庫に保管されていた小箱を持って王宮のある王都へと向かった。
モナも見せてもらったが、見る限りそれはただのインクなどを吸い取る色あせた小さな器具にしか見えなかった。
しかし、開け方も知らされていない金庫に大切に保管され、しかも王宮に持って行くのだから只の器具のはずがない。
モナはそれが何に使うものなのかどうしても知りたくなってしまう。モナが知る限り、その存在の意義を一番知っているのは祖母に間違いない。
そこでモナは、既に何事も無かったように窓際で椅子に揺られている祖母に近づき、それについて聞いてみることにした。
「ねえ、お祖母ちゃん、さっき金庫から出て来た物ってどう言うものなの?」
モナの問いに、半分眠っていたように見えた祖母が目を開いた。
「ああ、あれかい。あれはねぇ…そうねぇ、ぅん…モナは秘密は守れますか?」
祖母は少し考えてから、そう訊いて来る。
「うん、大丈夫だよ。モナは口はリビングの金庫より硬いからね」
「そうかい、それじゃあモナの口が開けられて仕舞わないように、鍵師さんには近づかせないようにしないといけませんねぇ」
そう笑顔でジョークを言う祖母に、モナはいつもの痴呆気味の祖母とは少し違った雰囲気を感じてしまう。
祖母は、ここぞと言う時には賢かったと言う昔の片りんを見せることがある。それを知っているモナには、今回の件には大切な何かが隠されている。そんな感じがしてしまうのだ。
「大丈夫、鍵師には近づかないから。絶対だよ」
だからモナは、祖母のジョークに真剣な顔で応える。
「では、これから話すことは秘密の話だから誰にも話さないようにね。父さんや母さんにもだよ」
「大丈夫、絶対に秘密にする」
モナに念を押した祖母は、椅子に揺られながら思い出すように話し始める。
「実はあれはねぇ、恋心を吸う魔道具で”スポイトット”と言うものなのよ。お祖母ちゃんも、そのまたお祖母ちゃんから聞いた話なんだけどね…」
祖母が目を細めて話し出すその口調は、日ごろの祖母よりも少し若々しくモナには感じられた。
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