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80年前のこと
それは80年ほど前のこと。
モナの住むフランヌ王国シュルツ領には、世間をふるえ上がらせる大泥棒が存在した。
彼は”怪盗二枚腰”と呼ばれ、主に豪商や貴族等の裕福な名家をターゲットとする盗人であった。
頻繁に現れ狙った獲物は必ず盗んでしまう彼は、当然の如く領地内で大きな問題となり、領主のシュルツ公爵を大きく悩ませていた。
因みに”二枚腰”と言う名は、一度狙った獲物はそれを得るまで、粘り強く狙い続けることから付いた二つ名である。
そんな最中、街中にある噂が広まり始める。
それは「恋心を奪う魔道具が領主様に献上された」と言う、常識では考えられない珍品の話である。そして、その魔道具は領主により”スポイトット”と名付けられたと言うのだ。
名前まで付けられたことで、その信憑背が増して行く。次第に民衆の間では、噂から事実として受け止められ始められるようになって行ったのである。
そんな大きな話題が怪盗二枚腰に入らない訳がない。
信憑性もまだ確実ではなく、盗んだとしてもお金にすることが出来るかどうかも分からないが、珍しいそれを手に入れたいと思うのが大泥棒の性。更に”恋心”と言う漠然としたものでも”奪う道具”と聞けば大泥棒としては黙って見過ごすことは出来ない。
彼は、早速それを盗むべく行動を開始したのである。
怪盗二枚腰は、変装と読唇術の使い手であり第六感にも優れていた。
彼は領主のお城に粘り強く何度も忍び込むと、その能力をフルに活用し、その保管場所を探り当てることに成功する。
そして、いざ盗みにお城に侵入してみると、以外にもその保管場所には特別の見張りもいなければ、保管していた金庫も簡易的なものであった。
彼は少し拍子抜けしながら、それを造作もなく盗み出すことに成功したのである。
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