おとうさんの唐揚げ弁当

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   その日ぼくは、あんまりお弁当が美味しかったから、幼稚園のお迎えもお父さんが来てくれるって、勝手に思い込んでいたんだ。  だから、お父さんが迎えに来てくれるまで、本当は自分で壊してしまった工作を、もう一度作り直そうと思っていた。  その日の工作は、ティッシュペーパーの箱に色画用紙を貼り付けて、動物や怪獣を作る工作だった。僕のうちには、お父さんが連れてきてくれた、猫がいた。名前はお母さんがつけた。ちろ、って名前だ。ちろは真っ黒な猫。すごく人懐っこい。夜寝る時間になると、お父さんもお母さんも「さあ寝る時間だよ」と言う前に、ベッドに一番に潜り込むのは、いつもちろだ。僕はちろをモデルに黒猫を作ろうとしていたんだ。さっき一度壊しちゃったけどね。  「さようならまたあした」のお歌を歌い終わると、バス通園の子達は先生に連れられて、バスに向かう。その頃には、園庭にお母さんやおじいちゃん、おばあちゃん、が、お友達を迎えに集まっている。  僕は延長保育だったから、お歌の後は、ほとんど自由時間。  僕には、お父さんが迎えに来てくれるって確信があったから、今日はアンパンマンのDVDも見ないで、もう一回先生にセロハンテープと、色画用紙を用意してもらって、黒猫を、今度こそ本物のちろみたいに可愛らしく作って、お父さんに見せて、いつもみたいに褒めてもらおうと思ったんだ。
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