おとうさんの唐揚げ弁当

3/3
前へ
/14ページ
次へ
   ぼくは、ちろの三角形のピンとしていて、首を振るとぱたぱた音のする耳を、どうしてもうまく作りたかった。でも、四角くて、たいらな紙でできてるティッシュの箱には、僕がつけてあげたい、ちろの耳はどうしてもうまくつけられない。ぼくは、三角形の耳を真ん中から折って、ちゃんとちろの耳みたいに猫の頭にくっつけたかったんだ。  でも、ティッシュの箱に色画用紙を丸く切ってはり付けた黒猫のペラペラの顔には、三角形に折った耳はその立体を保ったままではくっつけられない。僕は、また頭が真っ白になりそうになってきた。工作やお絵描きは大好きなんだけど、こうやって、自分の思い通りにいかないと、ぼくの頭は、いつもお湯が沸騰するみたいに真っ白になってしまう。そして、結局ぼくは、その黒猫を再び上履きを履いた足で踏みつけてしまった。  ぼくは、何度もその黒猫を踏んだ。  よくわからないけど、涙が出てきた。  気がついたら、僕は、しゃくりあげて泣き出していて、びっくりした先生やお友達が周りに集まっていた。でも、ぼくは、ちろの耳がピンと三角形にできなかったことが悔しくて、先生や、お友達が周りで何を言っているのか、全然聞こえなかった。  僕は、しゃくりあげながら、上履きで何度も黒猫を踏んだけど、本当は抱き上げて、抱きしめて、ほおずりしてあげたかった。耳が三角形にピンと立ってないぐらいで、こんなに憎悪を向けられる黒猫が本当は不憫で仕方がなかった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加