ふるえる

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お父さんのうめき声で、お母さんは目が覚めた。 「まさか…。」と、お母さんは壁を見つめたまま思考した。 …ぬいぐるみは2階にあったのに、ここまで本当に歩いて来たの?……と、お母さんは お父さんの上に熊のぬいぐるみが登っている想像をして、震えている。心の中で葛藤中なのである。 …振り向いて、お父さんを起こそうかしら。それとも、寝たふりをしてやり過ごそうか…これじゃ、私の上にも熊が来るかも知れない。 思考を巡らせていたお母さんは、意を決して、お父さんの方を向いた。 しかし、そこに居たのは熊ではなかった。 お父さんのお腹の上には…… さかさまになって寝る、リリ子の脚があった。布団も蹴って剥がされたようだ。 お母さんは、熊のぬいぐるみが移動した理由がリリ子の寝相の悪さのせいだとわかり、ぐっすり眠れた。 リリ子も、ぐっすり眠れた。 お父さんは、ちょっと寝不足になった。 熊のぬいぐるみが移動した理由を知って、リリ子は納得して爆笑した。それでも、部屋に入る時は、ぬいぐるみが昨晩と同じ場所にあるかを確かめながら そーっと戸を開けた。同じ場所にあるのを見て、安心した。 安心、したのだけど……夕方、ご飯を食べながら、リリ子はお父さんに「今日も一緒に寝ていい?」と訊いた。 お父さんは、リリ子の寝相の悪さを思い出して震えるのだった。
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